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本田“いる・いない”論を越えて――。
福西崇史が語る「最も大事な1カ月」。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/05/30 13:10

本田“いる・いない”論を越えて――。福西崇史が語る「最も大事な1カ月」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

所属チームのカップ戦出場のため、本田圭佑、岡崎慎司、酒井高徳を欠いて日本代表はブルガリア戦を迎える。

問われるのは、誰かが“いる・いない”ではない。

「これはもう、実現不可能な“理想”の話じゃなくて、現実問題として誰が出てもそれぞれの特長を活かし合えるチームを作らないと世界のトップレベルには勝てない。トップ下としての本田と香川、あるいは(中村)憲剛のスタイルが違うのは当たり前のことで、ケガじゃなくても、試合中にお互いのポジションを入れ替えて戦ったほうがいいケースもあるよね。その時にチームが機能しなければ、当然結果にはつながらない。

“本田不在”は一つの象徴的な例として取り上げられているけど、もしヤット(遠藤)がいなかったらどうするか、長友がいなかったらどうするかも全く同じ問題だと思う。万全の布陣で臨んだとしても、相手が本田に2人マークを付けてきたらどうする? ヤットがマンツーマンで潰されたら? 試合や相手によってすべての状況が変わる。大事なのは“いる・いない”じゃなくて、チームとしていかなる状況にも対応できる力を蓄えているかということ」

ブラジル代表は、1本のパスでシフトチェンジする。

“違い”を理解してシフトを変える。それが理想ではなく世界トップレベルの現実であることを、福西は体験的に熟知している。笑いながら、こう続けた。

「やっぱり、ブラジル代表だよね。分かりやすく言えば、やる気がないのかと思うくらいダラダラやっていたと思ったら、いきなりシフトチェンジしてサイヤ人に、それでもダメならスーパーサイヤ人になる(笑)。

 力の入れ方の問題じゃなくて、彼らは刻々と変化する状況に合わせて戦い方を変える。その大切さと強さをよく知ってるよ。たった1本のパススピードの変化で、それを周りが感じて合わせる。それが本当に能力の高い選手たちの集合体、チームとしての力だと感じる。もちろんブラジルだけじゃなく、世界のトップレベルは試合の中でそれをやってくる。その力が、日本はまだもの足りない」

キープ力のある本田にボールを預けることの意味とは。

 では、ピッチ内で感じ取るべき、本田と他の選手との違いとは何か。

 最も大きな要素は、“時間”の創出による選択肢の拡大である。

「他の選手にない本田の武器は、体の強さを生かしたキープ力。相手ゴールに近いエリアで本田がキープできるということは、当然相手もプレスをかけてくる。そうすると、必然的に周りの選手が自由にプレーできるエリアは広がる。もしくは、本田へのプレスで相手の組織が崩れれば、他の選手がそこに飛び込むこともできる。つまり、周囲にいる味方に時間的な余裕が生まれて、選択肢が広がる。それが、キープ力のある本田にボールを預けることの大きな意味の一つ」

【次ページ】 本田と香川、中村憲剛で異なるトップ下像。

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