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若手の伸び悩みに苦しむイングランド。
好調ブンデスの「育成」と何が違う!?
text by
鈴木英寿Hidetoshi Suzuki
photograph byThe FA via Getty Images
posted2013/05/25 08:02
FAイングランド・アワード授与式でのスティーブン・ジェラード(写真左)、ボビー・チャールトン(中)、現イングランド代表監督ロイ・ホジソン(右)。今年で150周年を迎えたイングランドサッカー協会(FA)の“復権”は若い力の台頭にかかっている。
下部組織出身選手が目立つバイエルンとドルトムント。
イングランドとドイツとを比較した際、何より違いがあるとすれば、ホームグロウン選手の数とクオリティではないだろうか。「ホームグロウン」とは、国籍は関係なく15歳から21歳までの間に「所属クラブ、または所属クラブが在籍するサッカー協会に3年間在籍した選手」のことを指す。
CL決勝で相まみえるブンデスの2チームを見ると、バイエルンは、フィリップ・ラーム、バスティアン・シュバインシュタイガー、トーマス・ミュラーがアカデミー出身(ちなみにドルトムントのマッツ・フンメルスもバイエルンのアカデミー出身)。ドルトムントは、マリオ・ゲッツェ(怪我でCL決勝は欠場決定と報道)、マルコ・ロイスがアカデミー出身である。
一方、プレミア勢のCL出場チーム、マンチェスター・シティ、チェルシー、アーセナルのレギュラークラスを見渡すと、アカデミー出身者は皆無に等しい。アーセナルではイングランド代表の天才肌のジャック・ウィルシャー、チェルシーではジョン・テリーがホームグロウンの代表例だが、両クラブともにその輩出数はドイツのクラブに及ばない。
その意味では、マンチェスター・ユナイテッドはいわば例外的クラブである。
引退するベッカム、スコールズもアカデミー出身で、これまで多くのホームグロウン選手をトップチームに送り込んできた。ダニー・ウェルベック、トム・クレバリーらはすでにイングランド代表の中核を担っており、これに他クラブ出身のマイケル・キャリック、クリス・スモーリングらを加えれば、代表先発メンバーの半数をユナイテッドの選手が占める試合も珍しくはない。ファーガソンの後任、デイビッド・モイーズは前任者の方針を引き継ぎ「自国人選手の育成」を就任決定早々から公言している。引退したファーガソンの遺産は、こういった点でも称賛されるべきだろう。
ウェンブリーで行なわれる欧州CLファイナルは、間違いなくスペクタクルな一戦となるだろう。ポドルスキの言うようにこの一戦は、多くのイングランド人の目を大陸へと向かわせるかも知れない。
「それでも、ブンデスリーガは完璧ではないのですが……」という、ザイファートの皮肉とも取れる言葉は果たして、プレミアリーグとFAの首脳たちの耳に届くだろうか――。