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若手の伸び悩みに苦しむイングランド。
好調ブンデスの「育成」と何が違う!?
text by
鈴木英寿Hidetoshi Suzuki
photograph byThe FA via Getty Images
posted2013/05/25 08:02
FAイングランド・アワード授与式でのスティーブン・ジェラード(写真左)、ボビー・チャールトン(中)、現イングランド代表監督ロイ・ホジソン(右)。今年で150周年を迎えたイングランドサッカー協会(FA)の“復権”は若い力の台頭にかかっている。
イングランドにおける「育成」面での最大の障壁とは?
今季、欧州遠征を経験した某Jクラブアカデミーのコーチは「イングランドの小学生年代のチームでも、ボールをつないだのが新鮮だった」と私に証言してくれた。だが、若年層から光る才能を磨き続けても、トップチームに昇格し、チャンスを与えられ、経験を積まなければ原石は原石のままで終わってしまう。
イングランドにおける「育成」面での最大の障壁は、プレミアリーグとイングランドサッカー協会(FA)との意思疎通の悪さにある。
元イングランド代表DFのガレス・サウスゲートは昨年までイングランドサッカー協会でユース育成を統括してきたが、「FAよりもプレミアリーグのほうが力を持っており、改革は進まなかった」として、自ら身を引いている。また、FAのデイビッド・バーンスタイン会長は、改革路線を打ち出したものの一向にその成果が表れず、今年7月にはFA内部の内紛に追われるように、退任することが決定している。
EURO2000での惨敗を受け、改革を進めてきたドイツサッカー界。
一方、ブンデスリーガは近年、DFB(ドイツサッカー連盟)との協働により、育成改革を実現してきた。ブンデスリーガのチーフ・エグゼクティブを務めるクリスティアン・ザイファートは、現在では欧州のサッカー業界で有名となった「ドイツ育成改革の10年」について、こう証言する。
「EURO2000での惨敗後、DFBは、何か手を打たなければと考えました。当時、クラブレベルでは成功を収めていました。ドルトムントは1997年に、バイエルンは2001年にCLで優勝し、バイヤーレバークーゼンも2002年にCL決勝進出を果たしています。でも、ビッグクラブの首脳陣、ウリ・ヘーネスやカール・ハインツ・ルンメニゲといった元ドイツ代表選手の人々は、代表チーム改革のために、ユースアカデミー発展に貢献することで意見の一致を見たのです」
CL決勝の1カ月前、『テレグラフ』紙は様々な数値を用いて、ブンデスリーガの優位性を紹介している。
「一試合平均のゴール数はブンデスが2.86、プレミアが2.81」と、(平均ゴール数の違いがレベル差を表すわけでは決してないとは思うが)わざわざ微妙な数値の差を抜きだし、「過去10年に新築されたスタジアム数はドイツが9、イングランドが4」「ブンデスリーガの18クラブ中17人が自国人監督」といったように、徹底して両国を比較してみせたのだ。