沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
戸崎圭太、移籍後初の重賞Vなるか!?
騎手勢力図で占う混戦オークス。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2013/05/18 08:01
3月にJRA所属となって以来、初のGI制覇を目指す戸崎圭太騎手。5月12日現在、平地の騎手としては勝率.183と日本人ジョッキートップを走っている。
サンデー産駒が減るにつれて変わってきた騎乗技術。
かつて、サンデーサイレンス産駒全盛期は、ディープインパクトに代表されるように、道中折り合いをつけて脚を溜めれば、最後の直線だけで前の馬をまとめてかわしてしまう瞬発力を持った馬が少なくなかった。
そうした馬は「動かす」こと以上に、「抑える」技術が求められるので、当たりのやわらかさが必要だった。なので、地方競馬(出身)の騎手が得意とする、当たりの強い乗り方はあまり歓迎されなかった。ところが、サンデーサイレンスが2002年に世を去り、優れた瞬発力を持ったサンデー産駒が少なくなるにつれ、馬を「動かす」乗り方が脚光を浴びるようになってきたのである。
追いながら膝の屈伸を繰り返し、尻を鞍につけたり離したりする乗り方で、傍目に最もわかりやすいのは岩田である。しかし、今やJRAの生え抜きでも、蛯名、幸英明、川田、三浦皇成といった騎手は、脚(きゃく)で馬の前躯を押し込むようにしながら尻を上下させる追い方をとり入れている。
人間がおんぶ競走をするとき、上になっている者に激しく動かれると、下の者は走りづらくて仕方がない。そう考えると、尻を上下させる追い方は理に適っていないように思えるし、地方出身の内田などは、先に記したJRA生え抜きの騎手たちよりも馬上で尻を上下させる動きが小さかったりするので、今はそれぞれが試行錯誤している段階なのだろう。
ともあれ、何人ものリーディング上位騎手の騎乗フォームを変えさせるほど、地方競馬出身騎手の躍進が目覚ましいことは確かである。
地方出身騎手以上に、競馬界の勢力図を塗り替えた外国人騎手。
地方競馬の騎手が中央入りして活躍する道を切り開いたのは、笠松から2003年にJRAに移籍した安藤勝己であった。キングカメハメハでNHKマイルカップと日本ダービーの「変則二冠」を制し、さらにダイワスカーレットやブエナビスタといった名牝で数々のビッグレースを勝つなどした安藤は、今年1月限りで現役を退いた。
ひとつの時代が終わったと思ったら、前述したように戸崎がJRA入りするなど、地方競馬出身騎手のつくるうねりが小さくなる気配は一向に感じられない。
さらに、彼らと同じぐらいかそれ以上のパワーで日本の騎手界の勢力図を塗り替えたのが、外国人騎手である。
年間最長3カ月の短期免許が交付されるだけなので、リーディング上位に顔を出すことはないが、大舞台での強さには目を見張るものがある。
先に記したように、デムーロ兄弟が桜花賞、皐月賞と2週連続でGIを制し、ダービーでは騎手免許期間の都合で弟のクリスチャンがロゴタイプに乗るなど、堂々主役を張っている。
昨年のGIに関しては前記の通りで、2011年は22のGIのうちウンベルト・リスポリ、ニコラ・ピンナ、ライアン・ムーア(外国馬で勝利)が1勝ずつ挙げ、ウィリアムズが2勝。'10年もウィリアムズ、ホイ・ウィン・ライ(外国馬)、クリストフ・スミヨン、ムーア(外国馬)が1勝ずつ、ミルコ・デムーロが2勝している。
野球やサッカーなどと比べると、騎手の場合は、欧米でもトップクラスの者たちが世界一の賞金を獲りにくるわけだから、特にJRA生え抜きの若手騎手は大変である。