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浅村栄斗と金子侑司が新時代を築く!!
あえて同級生を競わす西武の育成法。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/02/10 08:01
春季キャンプでは、ドラフト1位の投手・増田達至とともに1軍入りとなった金子。「金子は遊撃を守れるので、他の選手と競争させたいと思っている」と渡辺監督の期待も大きい。
「タツヨシには僕が必要やったんやと思います。同じ公立からプロに入った同期がいて、でも、自分の方が力は上やってみれる存在がね」
たった 4年でヤクルトのユニフォームを脱いだその男は、田中将大(楽天)ら豊作の'88年組の中で後れを取っている増渕竜義(ヤクルト)の近況を慮り、持論を展開した。
「もともと、アイツはものすごい自信を持っているタイプちゃうから、僕みたいな存在がいるっていうのは意味があったと思うんですよ」
事実、その男、山田弘喜が3年目の2009年秋季キャンプで一軍に抜擢されると、翌年、増渕のお尻に火がついた。2010年シーズン、増渕はキャリアハイとなる57試合に登板、防御率2.69、中継ぎ投手として20ホールドを記録した。好成績を残した陰には同期の存在があった。
しかし、そのシーズン限りで山田が戦力外でチームを去ると、'11年、増渕はローテーションに入りながら、7勝11敗。防御率は4点台。昨シーズンは全く振るわず防御率は5点台まで落ちている。増渕の伸び悩みを考えると、今でも交流のある山田の指摘も的を射ているように思えてくる。
チーム内にいる同級生の存在――。
時にはライバルになり、時には、苦楽を分かちあう友になる。チームを活性化させていくためには、同期や同世代の選手たちのポジションの重複を厭わず、強化していくことも時には必要なのである。
「ポスト中島」で同級生を競わせる、西武の深謀遠慮。
プロ野球キャンプが第3クールを迎えている。
大型トレードのあったオリックスや日本ハム、元メジャーリーガ2人を獲得した阪神の話題など、今年もキャンプ情報は盛りだくさんだが、個人的には西武の遊撃手争い、いわゆる「ポスト中島」を巡る競争に注目している。
昨季まで西武の遊撃手に君臨していた中島裕之が海を渡り、そこに大きな穴が。当然戦力ダウンにはなるが、固定されてきたポジションが空くと思わぬ若手の台頭を促すという楽しみもある。
渡辺久信監督は「全員が(ポスト中島の)候補」と話し、セカンドからコンバートする片岡易之(今季から治大)をはじめ、浅村栄斗、永江恭平、山崎浩司、鬼崎裕司、新人の金子侑司の名を挙げ、彼らにチャンスがあると公言している。
この争いで注目したいのは、 5年目の浅村とルーキー・金子である。
彼らは入団年こそ違うが、'90年生まれの同級生だからだ。