欧州CL通信BACK NUMBER
バイエルンに完敗したユベントス。
それでも、彼らが前を向く理由。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/04/11 12:15
前半終了後、ハーフタイムにピッチから出る時のユベントスの選手たち。0-0というスコア以上の実力差を肌で感じた選手らの顔に、余裕はまったくなかった。
イタリア王者として、3年ぶりにチャンピオンズリーグの舞台に戻ってきたユベントスには、ある葛藤がずっとつきまとっていた。
CLでも、セリエAを制した全員サッカーを貫くべきか。それとも、多少無理な金策をしてでも一流プレーヤー、特にビッグネームのFWを獲得すべきか。
明確な答えを出せないまま臨んだバイエルンとの準々決勝は、2戦とも0対2で完敗。彼我の差は歴然としていた。
執拗なプレスと、リベリーとロッベンのスピードに翻弄される。
バイエルンのホーム、アリアンツ・アレナの初戦では、1トップのマンジュキッチから始まる猛烈なプレスに圧倒され、ユーベは手足をもがれたように完封された。
試合開始25秒で失点したGKブッフォンは、毒舌家のベッケンバウアーから「年金生活者のようだ」ときつい皮肉を頂戴し、頼みの綱だった司令塔ピルロが精細を欠くと、伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の寸評も、「彼がミスを連発するとは……世界の終末が近いのか?」と悲嘆調にならざるをえなかった。
バイエルンは、2ndレグを前にブンデスリーガ史上最速優勝を決めて、トリノへ乗り込んできた。過去3年、2度もファイナルで敗れているバイエルンには、“今季こそ”という執念が渦巻いている。初出場の選手も多いユベントスが付け入る隙はなかった。
2ndレグも激しいプレスを矢継ぎ早に仕掛けてくるバイエルンは、容易に攻め込ませない。前半を危なげなく無失点で乗り切ったことで、落ち着いたドイツ王者は後半、牙をむいてきた。
機を見たリベリーとロッベンから両サイドを突かれ、ユーベの中盤は自陣へ張り付くしかなかった。一対一の攻防に絶対の強さをもつ彼らに比肩するスピードの持ち主は、セリエAにはいない。
直前のペスカーラ戦で2得点し、「バイエルンと戦争だ」と鼻息荒かったエース格のブチニッチと、意外性を見込まれたクアリアレッラの先発2トップも、MFハビエル・マルティネスの執拗なマークによって封じ込まれた。マルティネスは、今季開幕前にバイエルンが大枚4000万ユーロをつぎ込んで獲得したスペイン代表の選手だ。今のユベントスにはとても手が出せない。イエローカードすれすれの激しいファウルも、“決勝へ行く”というチーム全体が共有する気迫の表れだった。