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“プレーの甘さ”を払拭できるのか?
吉田麻也、「万能なCB」への葛藤。
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![西川結城](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/04/13 08:01
![“プレーの甘さ”を払拭できるのか?吉田麻也、「万能なCB」への葛藤。 <Number Web> photograph by Takuya Sugiyama](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/1/1/700/img_11fcd34a54d16c85dcd842d936ee6929241835.jpg)
ヨルダン戦、痛恨の2失点目につながる突破を許した吉田。それはプレミアとアジアのジャッジの違いを意識したが故の“ためらい”が招いたミスだった。
球際で負け、パク・チソンに置き去りにされたQPR戦。
最近の吉田のプレーには、ヨルダン戦以外でも同じような場面があった。
3月初めに行われた、QPR(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)戦。対戦相手には、元韓国代表の朴智星(パク・チソン)がいた。吉田は、朴に対してある思いを抱いていた。
「ヨーロッパに来てから、やっぱりアジア人、日本人であることをすごく意識するようになった。そんな中、チャンピオンズリーグを見ていて、マンチェスター・ユナイテッドで朴智星が活躍する姿にすごく興奮する自分がいたんです。『アジア人が、世界のトップでここまで戦っている』という。すごく感化されましたし、彼を越える存在にならないと、とも思いました」
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それほどまで脳裏に焼き付いていた選手である。もちろん、彼のプレースタイルや特長もわかっていたはず――だった。
しかし、その試合で朴に自らの武器を発揮されてしまった。サイドのスペースに出されたボールを吉田と朴が同時に追いかけ、共にスライディング。ほぼ同時にボールに到達したかに見えたが、球際の速さと強さで朴が上回り、そのまま吉田は置き去りにされてしまう。朴にフリーでサイドの深い位置から折り返され、それがチームの2失点目につながった。
「腹立たしいです。思い出すだけで、自分がムカつきます」
「対戦を楽しみにしていたんですけど、その選手に自分がやられて失点してしまった。絶対にあの球際の場面で、自分が先に触れると思っていたんです。でも相手の一瞬のスピードがやっぱり速かった。最後ガガガ! と来て、スライディングされて相手のマイボールにされた。僕も対応の甘さが出ました。
朴智星はああいうルーズボールに競り勝つことで、今までプレミアで戦ってきた選手じゃないですか。まさにあれは彼の真骨頂のようなプレー。そのプレーで相手に負けたということが悔しい。それに同じアジア人、しかも日本のライバルである韓国の選手に負けた。わかっていたのに相手の得意なプレーでやられた、また自分がやらせてしまったことが、腹立たしいです。思い出すだけで、自分がムカつきます」
吉田は万能なCBではない。繰り返しになるが、スピードやアジリティといった面では決して長けているとは言えない。だからこそ、彼は思考力、戦術眼といったところで足りない部分をカバーし、相手を上回ろうとしている。
ヨルダン戦から再びプレミアの戦いに戻った直後のチェルシー戦でも、自陣ゴール前で鋭い予測とフィジカルコンタクトで相手の動きを封じ込んでピンチを切り抜けてみせた。タフなプレーからは、代表での失態を決して引きずらないという強い思いも感じ取ることができた。