Survive PLUS ~頂点への道~BACK NUMBER
“プレーの甘さ”を払拭できるのか?
吉田麻也、「万能なCB」への葛藤。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/04/13 08:01
ヨルダン戦、痛恨の2失点目につながる突破を許した吉田。それはプレミアとアジアのジャッジの違いを意識したが故の“ためらい”が招いたミスだった。
Number Webでは、雑誌と連動したウェブオリジナル企画
「Survive PLUS ~頂点への道~」として、Number本誌には
掲載されなかったエピソードや、取材の舞台裏などをお届けします。
第2回の今回は、ヨルダン戦でも見せた“一瞬の甘さ”、
Jリーグ時代からの悪い癖であり、課題であった
“時折見せる抜けたプレー”についての葛藤を綴っています。
サウサンプトンが、ここに来て好調の波に乗っている。
2月9日のマンチェスター・シティ戦で大金星を挙げて以降は、チームの成績は下降線を辿っていた。ニューカッスル、クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)に連敗を喫し、強烈な氷雨が降り注ぐ中で行われたノリッチ戦も痛恨の引き分け。一時は、このまま下位グループに引きずり込まれてしまうかに思えた。
しかし、ここからアーセナルやマンチェスター・C相手にも見せた“ジャイアントキリング”で、再度チームは上昇していく。ホームにリバプール、チェルシーを迎えた2試合で、見事連勝を達成すると、さらに次のレディング戦も盤石の試合内容で勝利し、今季初の3連勝を記録した。
「このチームは強豪クラブに勝つと、その後の試合で結果を残せない。2月の(マンチェスター)シティ戦の後の戦いぶりみたいに。だからこそ、次の試合が大切になってくる」
吉田麻也はこう危惧していたが、それも杞憂に終わった。チームは強豪を立て続けに叩き、さらに直後のレディング戦でもしっかり勝ち点3を奪ってみせた。クラブの今季の目標は、プレミア残留。これから佳境を迎えるリーグ戦において、このタイミングでの連勝は、勝ち点の上積みはもちろんのこと、選手たちに精神的な余裕と自信をもたらす面でもプラス要素だ。
オランダ時代から毎シーズン残留争いを経験してきた吉田も、メンタル面の重要性を語る。
「僕は残留争いのベテランですから(笑)。その経験から言うと、最後の10試合は本当に体力だけでなく神経も使う。気持ちも体もポジティブに保っていかないといけない。少しでも『マズイ……』という感じになると、一気に下り坂になってしまう」
「何としても4月中に(残留を)決めたい」
第32節を終了してリーグ戦は残り6試合。サウサンプトンは現在勝ち点37で、11位にまで浮上した。降格圏である18位のウィガンとの勝ち点差はたったの6。予断を許さない状況に変わりはないが、現状の流れを継続させることができれば、リーグ戦最終盤を待たずに残留を確定できる立場にある。
「何としても4月中に(残留を)決めたい」
来季もプレミアで戦う資格を維持することは、最低限成し遂げなければならないタスクだと、吉田は考えている。その目標達成に向けて、ここからさらにモチベーション高く戦う覚悟だ。
こうしたチームの戦いの中で、吉田個人もさまざまな浮き沈みを経験してきた。いや、どちらかというと、ここ1、2カ月は痛みやつらさが伴う“沈み”に直面することの方が多かったかもしれない。それはプレミアでの戦いだけにはとどまらない。W杯最終予選ヨルダン戦での痛恨のミスも、もちろんその“沈み”には含まれている。