サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本代表「決定力不足論」への疑問。
~福西崇史が“悲観的でない”理由~
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/03/30 08:03
ヨルダン戦前、「4年前(南アW杯出場を決めたウズベキスタン戦)はベンチ外だった。こみ上げてくるものは必ずあると思うし、次の試合で決めたい」と語っていた香川。追撃の1点は入れたものの、W杯出場決定を自らのプレーで決めることはできなかった。
「攻撃については連係の向上が見られた試合だった」
ポジティブな要素は、本田圭佑と長友佑都が不在だったからこそ見えてきたものだった。
「ヨルダンの動きが思ったより鈍かったこともあって、日本は立ち上がりから自分たちの形を作ることができた。清武と香川のコンビネーションがいいことは分かっていたけど、何よりそれを、あの舞台で発揮できたことに意味があると思うよ。確かにシュートを打たなければならないシーンはあったけど、オレはそれより、日本がイメージしていることを表現できたことに成長を感じたし、あの2人の関係だけじゃなく、特に攻撃については連係の向上が見られた試合だったと思う」
福西氏はいつも、誰が欠場することになっても、それが直接的な戦力ダウンに直結するとは考えていない。口癖のように言うのは、「代わりに入った選手の特長をチームとして引き出せばいい」ということ。巷で繰り広げられている“トップ下論争”についても、本田には本田の良さ、香川には香川の良さがあり、いずれもチームとしての連係さえ十分なら機能しないはずがないと考えている。
もちろんそれは、前田遼一とハーフナー・マイク、長友と酒井高徳を入れ替えても同じことが言える。
“各選手の特長”を活かすことがアウェーで出来たということ。
今の日本代表は本田と長友がスタメンに名を連ねた状態で多くの試合をこなしているから、そのセットの完成度が高いのは当然のことだ。しかしレギュラーの11人だけでなく“チーム”としての完成度を高めようとするなら、どんなセットでもその特長を発揮しなければならない。選手間の競争力と選手層の厚さ、それから本当の意味でのチーム力は、それに保証されたものでしかない。
そうした意味において、本田と長友を欠いた今回のセットで、選手が互いにその能力を引き出し合うことで生まれた攻撃の形をポジティブに捉えることができる。
「もちろん“負け方”としては良くなかったと思うよ。課題とされてきたセットプレーで、しかもあれだけ押していた前半終了間際にやられて、2失点目もミスから生まれているわけだから。ただ、特に攻撃陣については、誰が出てもある程度の形を作れるようになったと思うし、そのレベルが着実に上がっていることは間違いないと思う。ピッチに立っている11人のセットに応じて、選手それぞれの特長を活かすという側面を見れば、精度は確実に上がっていると思う。しかも、それをアウェーの戦いで見られたことが大きい」