WBC 侍ジャパンの道BACK NUMBER
侍ジャパン、死闘を足攻で制す!!
鳥谷の二盗が導いた台湾戦勝利。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/09 12:10
9回表2死一塁から飛び出した鳥谷の二盗。今大会における侍ジャパンの命運がかかる非常に重要な場面での、勇気溢れる素晴らしいプレーだった。
投手の全てのクセを分析し、確信をもって盗塁させた。
何もしないか、盗塁にかけるか。
ベンチの選択が、スチールだった。
決してスピードスターというわけではないが、それでも鳥谷は足も速いし、3シーズン連続で2ケタの盗塁をマークしているなど、盗塁技術もある。ただ、決してアウトになることが許されない絶体絶命の局面でのギャンブルである。
「クイックが速くないから、初球から行っていいぞ!」
一塁コーチャーの緒方耕一コーチからすぐさま出たGOサインに、鳥谷もスタンバイはできていた。
「行けたら行っていいと言われているので、行けるように準備はしていました」
ただ、である。
これは単なるギャンブルではなく、もちろん走れるという根拠があった。
実はすでにマウンドの台湾のクローザー、チン・オウブン(陳鴻文)のけん制のクセ、クイックの速さなどのデータは洗い出していた。そういうデータの裏付けの上でのギャンブルには、成功の可能性が十分にあったというわけだ。
「あの盗塁がなかったら終わっていた」
警戒してまずチンが1球、けん制を入れた。それが逆にタイミングを計るきっかけになった。
「アウトになることは考えなかった。腹をくくって思い切っていくしかないと思った」
その直後の盗塁は間一髪だったが、二塁塁審の両手が広がり、そこから日本の同点、逆転の道も広がった。
「あの盗塁がなかったら終わっていた。彼に救われたということでしょう」
こう振り返ったのは高代延博コーチだ。
実はこの日の日本は、データを駆使しての足を積極的に使った攻撃が目についた。
結果的には攻略に結びつかなかったものの、台湾先発のワン・チェンミン(王建民)に対しても、クイックが遅いというデータから初回に井端、内川が出塁すると、盗塁をしかけて揺さぶっている。