WBC 侍ジャパンの道BACK NUMBER
オランダ完封で“完全復活”宣言!
前田健太に見た日本のエースの資質。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/11 11:40
完璧な投球内容にも「味方が先に点を取ってくれましたから、楽な状態で投げられました。今日は野手の方のおかげです」と、さらに謙遜したコメントを出した前田。
予想を覆す圧勝劇だった。
乱れ飛んだWBCタイ記録の6本の本塁打。破壊力のあるオランダ打線を相手にどれだけスモールベースボールをできるかと言われたこの試合を、パワーで圧倒したのは日本の方だった。
「スモールベースボールと言われたのがウソみたい。こんなにホームランが出るとはね。一昨日(8日の台湾戦)の勝ちで、神様がご褒美をくれたんだと思う。これで全員が吹っ切れたと思う」
山本浩二監督も驚いた先発全員の17安打16得点の猛攻は、打線にとっても、そしてこれまでの戦いを固唾を呑んで見守ってきたファンにとっても、溜まりに溜まったフラストレーションを吹き飛ばすものだった。
ただ……。
この爆発、鵜呑みにはできない。
打線爆発は「神様がくれたご褒美」だが、前田の復活は確実な収穫。
130キロ台のストレートに切れの悪いスライダーが高めに浮いたオランダ投手陣の質は、決して高いものとはいえなかった。もともと日本だって、一発の力のある打者が揃った打線。この相手なら本塁打が乱れ飛んでも何の不思議はないが、だからといってこれで打線にエンジンがかかったと自信を持つのは早急というものだ。
指揮官が言うように、この日の爆発はまさに「神様がくれたご褒美」。素直にこの日だけの喜びとしてとどめておくべきなのだろう。
その代わり3連覇に、もっともっと期待を抱かせる結果をみせてくれた事実がある。
“マエケン”の完全復活である。
前田健太は、5回66球を投げて1安打9奪三振。MAXは144キロだったが、何より良かったのがスライダー、カット、シュートなどの変化球の切れとコントロール。滑ると言われるメジャー球を、ほぼ自分のものにしてコーナーに投げ分けた。
まさに圧巻のピッチングだった。
しかも、この力投は1次ラウンドから打力で勝ち上がってきたオランダ打線を相手にしてのものなのだ。
だからこの復活は、鵜呑みにしてもいいわけである。