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<シリーズ 3.11を越えて> 小笠原満男 「子供たちの笑顔を守り続けるために」~“東北人魂”に込めた思い~
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byMiki Sano
posted2013/03/11 06:01
被災地のことを考えれば、あと1本のダッシュもできる。
満男の活動の輪はさらに大きく、広がりつつある。だが、プロサッカー選手である以上、こうした復興支援活動を、誰からも文句を言われずに行なうには、サッカーでの結果が求められる。
「もちろん、サッカーが第一。復興支援活動は引退してからでもできるし、チームの紅白戦にも出れず、一人グラウンドを走らされるのはもう嫌だからね。鹿島は求められているレベルが高いし、欲張りなチームなんです。普通のチームなら昨年、『ナビスコ杯のタイトルを獲りました』って胸を張ってスポンサーに報告するはずだけど、『鹿島にとっては腑甲斐ないシーズンでした』ということになる。俺は、そんなチームが好きだし、やりがいを感じている。今年は3冠達成はもちろん、ACLの出場権を得て、来年は4冠を狙いたい。被災地ではまだまだ苦しんでいる人がいる。それを考えたらあと10分のトレーニング、あと1本のダッシュくらい、頑張れないわけはないんで」
復興支援とサッカーの両立に関しては「プラスでしかない」
復興支援とコンディションの維持に苦しんだ彼は、この2つを両立していくことに不安はないのだろうか。
「その不安はないし、俺にとってはプラスでしかない。サッカーに集中しろっていう人もいるけど、練習以外の時間にDVDを見たり、遊んだりしているよりも、こういう活動をしている方がよっぽど有意義だし、いろんな人の話が聞けて人間的にも成長できる。
それに、やっぱり震災のことが頭から離れないんですよ。ことあるごとに考えてしまうし、一生付き合っていくのかなって思うけど、決してマイナスじゃない。今できることをやって、プラスに変えていくことが大事だと思うんです」
思わず、「人間的な幅が広がったね」という言葉が出た。満男は少し照れたように「だてに年取ってないから」と、笑いながらこう続けた。