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WBCは“野球界の異種格闘技戦”!?
米国本土で味わった奇妙な疎外感。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2013/03/02 06:00

WBCは“野球界の異種格闘技戦”!?米国本土で味わった奇妙な疎外感。<Number Web> photograph by Getty Images

昨季はリーグの本塁打王をはじめとして打率3位、打点2位とほぼ三冠王ともいえる活躍をしているブラウン。盗塁も30個を記録するなど、類い稀な身体能力を誇る、メジャーを代表する選手である。

米国代表のR・ブラウンとR・ボーゲルソンには要注意!

 特にライアン・ブラウン(ブリュワーズ)は、素晴らしい動きを見せていた。

 フリー打撃から調子の良さがうかがえるだけでなく、守備でもダイビングキャッチを敢行。もし、アメリカと対戦することになったら、もっとも警戒すべき打者になるだろう。

 また、ワールドシリーズ制覇に貢献したライアン・ボーゲルソン(ジャイアンツ)も、まずまずの投球を見せており、試合を作る投球はしてくれるはずだ。

 要はアメリカの場合、どれだけの力を発揮できるかは、個々の選手の「自覚」に任されているに近い。もちろん、トーリ監督はモチベーションのアップを図るわけだが、選手がそれに応えられる肉体と技術を提供できる準備をしているか、が大きな問題になってくるのだ。

WBCは野球界の異種格闘技戦である!?

 準備にたっぷりと時間をかける日本。

 とりあえず集まって、やってみますか……というスタンスのアメリカ。

 なぜ、日本がここまで真剣に取り組むかといえば、日本国内でWBCが、大会、代表ともに「商品価値」を確立しているからに他ならない。

 アメリカでは見返りが少なく、注目度が低いから、どうしても“ちょっと集まってーー”という流れにならざるを得ない。

 要は、現在のWBCが最高の戦いになりえないのは、ひとえにアメリカをはじめとした有力国の準備が完璧足りえないからである。あくまでスプリング・トレーニングの期間に行われるエキシビション・マッチ、というのが位置づけだ。

 こう見ると、同じ野球ではあるが「異種格闘技戦」のような気もしてしまう。準備のアプローチがあまりにも違いすぎる。

「徹底準備派」には日本、韓国、キューバが入る。この3カ国は過去2大会のファイナリストであり、WBCの大会の格を上げた功労国だ。

 それに対し、アメリカ、ドミニカ、ベネズエラは「直前集合派」で、選手のポテンシャルは抜群だが、結果はそのときの運にも大きく左右される。

 今後、WBCが意味のある形で存続していくためにも、本当はアメリカに結果を出して欲しいところだ。そうすれば注目度も飛躍的にアップするだろう。

 決勝が日本対アメリカになれば……。

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ジョー・トーリ
ライアン・ブラウン
ライアン・ボーゲルソン

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