スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
WBCは“野球界の異種格闘技戦”!?
米国本土で味わった奇妙な疎外感。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2013/03/02 06:00
昨季はリーグの本塁打王をはじめとして打率3位、打点2位とほぼ三冠王ともいえる活躍をしているブラウン。盗塁も30個を記録するなど、類い稀な身体能力を誇る、メジャーを代表する選手である。
日本に帰ってきて、ワールド・ベースボール・クラシック、WBCのニュースがあふれているのに、驚いた!
2月21日から27日まで、アメリカはアリゾナにスプリング・トレーニングの取材に行ってきたが、その間はまるっきりWBCのことは忘れていた。
帰ってからまとめて新聞を読むと、他国の動静にも詳しいし、日本が「WBC大国」だということが分かる。試合ごとに侍ジャパン打線にメディアが一喜一憂しているのが面白い。この時期に打てないのはある程度、仕方がないと思うのだが、とにかく打ってもらわないと困るという論調である。
大会が始まって、打てなかったら大変な騒ぎになることは目に見えている。
アメリカからWBCを見てみれば……。
アメリカに滞在した1週間、テレビや新聞でWBCアメリカ代表のことを見かけたことは一度もなかった。さように注目度が低いことを知っておいた方がいいと思う。
唯一、WBC関連の情報を読んだのは、オープン戦で各球団がメディア向けに配布するインフォメーション・シートに、わがチームからはWBCに誰某が出ます、とそれだけである。
当然、強化体制が準備に入るのも日本に比べれば大幅に遅い。ようやく3月3日になって、アメリカ代表は全員集合! という状態である。それから数試合の練習試合をこなし、もう3月8日からは第1ラウンドの試合に臨む。
これではチームとしての熟成を図りようがないし、ジョー・トーリ監督も打つ手は限られてしまう。「お預かりした選手を、ケガのないようにお返しいたします」というプレッシャーも感じているだろう。
烏合の衆の米国代表。それでもポテンシャルはありまして。
集合してすぐに本番、という流れになるわけで、アメリカ代表のチームとしての期待値は低い。ただし、個々の選手のポテンシャルはやはり高いと思う。
代表に選ばれている選手のうち、幾人かの練習試合の様子を見てみたが、素質というか、やはりメジャーリーグの一流選手の動きは違うと実感した。2月下旬のオープン戦は、マイナーの選手も一緒に出ているので一層違いが際立つのだ。