プレミアリーグの時間BACK NUMBER
17年目のベンゲルに退任要求8割!
3月に賭けるアーセナルの命運。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2013/02/26 12:15
バイエルンとの試合後、「もっと自信を持って戦わなくては」と語ったウィルシャー。アカデミーから生え抜きの若き10番は、チームを復活に導くことができるのか。
ボランチの起用法に疑問を残したベンゲルの采配。
たしかに、疑問の残る采配がなかったわけではない。
ベンゲルは、ダブルボランチの一角として、アブ・ディアビを直前のFAカップ戦で起用し、アーロン・ラムジーをCLで起用した。ディアビの故障中、守備的な位置で奮闘していたラムジーを抜擢した辺りは、育てる意識の強いベンゲルらしい人選でもある。だが、本来は攻撃的なラムジーのボランチは、国内レベルが精一杯と思われただけに、バイエルン攻撃陣のレベルを考えれば、起用の順序を逆にし、身体能力に勝るディアビをCLで先発させる方が得策ではなかったか。
実際、中盤の盾が強度不足だったアーセナルは、トップ下のトニ・クロースを中心とする敵の2列目に、最終ラインを揺さぶられた。攻め込まれた結果として、相手CB、ダニエル・ファンブイテンの機動力不足をつくためにCF起用されたはずのセオ・ウォルコットは、自陣内からのパスをゴールを背にして受ける場面が増え、前を向いて快足を飛ばす機会が最小限となった。おまけに前半早々に2失点では、戦前のプランも何もあったものではない。
「ハングリー精神に欠ける」という批判は妥当なのか?
とはいえ、世間のベンゲル体制批判は、1月の本コラムでも取り上げたように、やはり行き過ぎの感がある。
例えば、大衆紙でステュワート・ロブソンが挙げた問題点。'80年代当時のアーセナルMFは、現監督下の選手たちが「ハングリー精神に欠ける」と言う。だが、バイエルン戦でのジャック・ウィルシャーを見れば、「高年俸に満足している」などとは言えない。中央を駆け上がり、単独で必死に突破口を切り開こうとする姿は痛々しくさえあった。21歳にして中核のMFは、「リーグでトップ4を逃してもいいから優勝トロフィーを手にしたい」と、国内カップ戦を前に公言していた1人でもある。
ウィルシャーと中央でコンビを組むことも多いミケル・アルテタは、減給を承知でエバートンからCL常連のアーセナルにやって来た。
左SBとして攻め込まれたトーマス・ベルメーレンは、CBが本来の持ち場。敵の右サイドでは、トーマス・ミュラーにフィリップ・ラームがオーバーラップで絡むとなれば、精神面云々ではなく、故障中の第1左SB、キーラン・ギブスが出場していても苦戦は避けられなかっただろう。