プレミアリーグの時間BACK NUMBER
17年目のベンゲルに退任要求8割!
3月に賭けるアーセナルの命運。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2013/02/26 12:15
バイエルンとの試合後、「もっと自信を持って戦わなくては」と語ったウィルシャー。アカデミーから生え抜きの若き10番は、チームを復活に導くことができるのか。
今冬の移籍市場でモンレアル獲得のみに留まった背景。
アーセナルが、今冬の移籍市場でモンレアル獲得のみに留まった背景には、今夏の市場で本格的な梃入れを行うことを好んだ指揮官の意志があったとされる。
バイエルンとのホームゲームを前に、「2年間の契約延長提示」という報道に対し、FAカップでの敗戦直後に「サポーターの不満を煽るような事実無根の情報操作だ」と憤慨したベンゲルだが、就任当初から「契約は誠意を以て全うする」と言い続けてきた「紳士」は、現契約最終年の来季は既に意識している。経営陣も、「完全支援」を公約しており、最高1億ポンド(約140億円)近い予算も用意していると見られる。続投の是非は、来季中に答えを出せばよい。
ベンゲルが見せた、プレミアトップ4維持への自信と決意の表れ。
ベンゲルは、バイエルン戦前の会見で、“Look.”(いいか?)と切り出してメディアに噛み付いた。これは、普段は冷静な知将が、稀に癇に障る言動を受けた際に口にする常套句だ。バイエルン戦後の会見では、来季のCL出場の可能性を問われた際に、この言葉で返答を始めた。続く「出場権獲得の方が勝ち残るよりも楽だろう」という発言は、敗退濃厚となったCLで自虐的になっているわけではなく、プレミアでのトップ4維持への自信と決意の表れと受け取るべき。
健全経営を続けてきたクラブの財政は、来季にCL出場で得られる報酬金収入がなくても耐えられる状態にあるが、CLという「餌」を失えば、指揮官が望むトップクラスの新戦力獲得は難しい。だからこそ、バイエルンとの第2レグで、最低でも3-0の勝利という奇跡を起こすこと以上に、直前のリーグ戦2試合で4位浮上に迫ることが重要になる。
選手たちも、司令塔として存在感を増す一方のウィルシャーから、最終ラインで貢献度アップが望まれるメルテザッカーまでが、「ボスへの批判は論外」と、ベンゲルの下で立ち直りを期す心意気を示している。第2レグでバイエルンに今季CLでの引導を渡されれば、メディアは「8年連続無冠決定」と書き立てることだろう。しかし、今季のリーグ4位と来季を見据える「ベンゲルのアーセナル」は、まだまだ終わっていない。