スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
負け犬の逆襲と接戦に強い球団。
~MLB今季の注目チームは?~
text by

芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/02/24 08:01

智将ショーウォルター監督の下、オリオールズは昨季の「奇跡」の再現を狙う。
若手投手の抜擢と、接戦に勝つ粘り強さが浮上の鍵。
去年の場合、アスレティックスとオリオールズに共通していたのは、若い投手陣に活躍の場が多く与えられたことだ。
とくにアスレティックスは、30歳以下の投手が先発した試合が24もある。これは、チーム建て直しの真っ最中にあるインディアンスと並んで大リーグ最多の数字だ。逆に、パイレーツ、ドジャース、メッツといった投手高齢化の目立つ球団がプレーオフ進出を逃したのは、いま述べた傾向の反証といえるかもしれない(ヤンキースやカーディナルスは、かろうじて難局を切り抜けたが)。
もうひとつの共通点は、両チームがどちらも接戦に強かったことだ。
ご承知のとおり、オリオールズは1点差ゲームで29勝9敗、延長戦で16勝2敗という奇跡的な数字を残した。1点差ゲームの勝率7割6分3厘は史上最高。これまでの最高が1908年のパイレーツだから、なんと104年ぶりに記録を塗り替えた計算になる。
アスレティックスもしぶとさを見せた。1点差ゲームでの成績が25勝18敗(インディアンスの24勝12敗に次いで大リーグ全体で3位)、延長戦でも11勝5敗(ナショナルズに次いで全体で4位)の好成績を残したのだ。
注目すべきは昨季負け越しを喫したチームの逆襲だ。
では2013年、昨シーズンのオリオールズやアスレティックスを彷彿させるチームは出現するのだろうか。
2012年に負け越した球団は全部で13だが、私の見るところ、このなかから2チームぐらいがプレーオフに進出してきそうな気がする。
とくに面白そうなのは、ブルージェイズ、ロイヤルズ、インディアンスの3球団だ。
ブルージェイズの補強成功はやはり魅力的だし、ロイヤルズとインディアンスは、そろそろチームの底入れが完了しそうな気配だからだ。去年負け越さなかったチームのなかでは、ダイヤモンドバックスとブレーヴスが伸びしろを感じさせる。
とまあそんなわけで、ファンが今季も接戦を求めていることはまちがいない。
過去3年を振り返っても、1点差もしくは2点差ゲームの数は、1181(史上2位)→1192(史上最多)→1154(史上4位)と高水準で推移している。本塁打濫発のステロイド時代(1995~2003)が終焉を告げて久しい現在、観客が求める試合の傾向は、かなりくっきりと浮き彫りにされている。当時と現在を比較してみても、年間総本塁打数は1000本ほど減っているのに、年間平均観客数は逆に2000人近く増えているのである。

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