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黒田博樹は38歳でさらに進化する。
メジャーで得た悟りは“Let it be”。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2013/01/26 08:01

黒田博樹は38歳でさらに進化する。メジャーで得た悟りは“Let it be”。<Number Web> photograph by Getty Images

昨シーズンの活躍が認められ、ヤンキースと1年、1500万ドル(約13億円)プラス出来高払いで再契約した黒田博樹投手。2月10日には38歳の誕生日を迎える。

 2012年シーズンが終了したとき、黒田博樹投手がこれまで取材してきた日本人メジャー投手の中でかなり特異な存在であることがはっきりした。

 昨シーズンはヤンキース1年目であり、黒田にとって勝負の年であった。

 これまで在籍していたナ・リーグから指名打者のあるア・リーグへの移籍ということもあって、ある程度の試練を予測し、昨年1月の自主トレ中にこのように話していた。

「これまでのようにはいかないでしょうね。防御率も3点台というのは難しいでしょうし、4点台は覚悟しています」

 ところが実際は、2011年シーズンに記録した防御率3.07に続く自己ベスト2位の3.32を記録。さらに勝利数(16勝)、登板試合数(33試合)、投球イニング数(219.2)で自己ベストを更新した。勝利数こそチーム事情に左右される数字だが、それ以外は黒田の安定した投球があったからこそ達成できた成績だ。

 そして黒田は、故障で登板数が少なかった2009年シーズンを除けば、メジャー在籍5年間、常に右肩上がりで成績を向上させている。

 私の記憶する限り、これだけの期間で毎年のように成績を伸ばしてきた日本人投手は他に存在しない。

 しかも、同学年の松井秀喜選手が昨年末に引退を表明したように、そろそろ引退を考えてもおかしくはない38歳という年齢で、着実にメジャーという舞台で投球を成熟させているのだからまさに驚異というしかない。

「1試合1試合が最後だと思ってマウンドに上がった」

 つい先日、2013年シーズンの自主トレを開始した黒田に昨シーズンの成功の秘訣について直撃してみた。

「技術的な部分ではそんなに変わっていない。となってくると、後はメンタルじゃないかと思いますね。(ヤンキースに移籍して)メンタル的にプレッシャーを感じて、いろいろな部分でしんどいかなと思いましたけど、それ以上に思ったより自分がプレッシャーに対応できたという感じがします。

 メンタル的に成長したというか、考え方ひとつで大分プレッシャーが軽減されるし、恐怖感というのが軽減されるんだなというのを感じましたね」

 ヤンキースにはメンタル・トレーナーが常駐しており、彼から試合に臨む姿勢を再認識できたという。

「1試合1試合投げる試合が最後の試合だと思ってマウンドに上がり、1球1球、アウト1つ1つがこれで最後のアウトだという気持ちで投げ続けた。それが一番自分にとって大きかったと思うし、この年齢になるとそういう気持ちを持てるというのが大きいと思う。それで、自分の中でメンタル的にもう1つ上のランクにいけたんじゃないかと思います」

【次ページ】 他の日本人投手と一線を画す、黒田流の思考法。

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