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金満球団の交替と野球の皮肉。
~MLBの超大型補強は実るのか?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/01/01 08:01
2012年は後半に失速して無冠に終わったが、エンジェルスと超大型契約を結んだハミルトン。
ザック・グリンキーがドジャースに入った。
ジョシュ・ハミルトンはエンジェルス入りを表明した。
この冬のFA市場で最大の目玉と見なされていた2選手が、そろって西海岸の球団に新天地を求めた。
年俸は、ふたりとも記録的に高い。
グリンキーが6年総額1億4700万ドル。ハミルトンも5年総額1億2500万ドル。
グリンキーの年俸(1年平均)2450万ドルは、投手として大リーグ史上最高だし、年俸総額も右投手としては史上最高となる。
一方のハミルトンも年平均2500万ドルだから、これはプーホルスの平均年俸を超える。2011年の冬、FAでやはりエンジェルスを選んだプーホルスの契約条件は10年総額2億4000万ドルだった。期間のちがいこそあれ、ナ・リーグで3度もMVPに輝いた大打者よりも高い年俸を払うというのは、果たして妥当なのだろうか。
金とビッグネームは東海岸から西海岸のロサンジェルスへ。
それはさておき、この大盤振舞で両球団は年俸総額の1位と5位に位置することになった。
1位がドジャースで、5位がエンジェルス。2位から4位までは、かつてビッグ3の常連だったヤンキースとフィリーズとレッドソックス。ヤンキースは、贅沢税を払うのがよほどいやだったらしく、15年間守りつづけてきた首位の座を、喜んでドジャースに明け渡したと見られる。つまり、金とビッグネームに関していえば、大リーグの中心地は東海岸の3都市から西海岸のロサンジェルスへ移転したといっても過言ではない。
わけても注目を集めているのが、2012年から新しいオーナー(あのマジック・ジョンソンもオーナーの一員になった)を迎えたドジャースの気前のよさだ。
ご承知のとおり、ドジャースは2012年の中盤から金に糸目をつけない補強を開始した。ハンリー・ラミレスをマーリンズから獲り、エイドリアン・ゴンザレス、カール・クロフォード、ジョシュ・ベケットといったレッドソックスの主力をごっそり引き抜いたことはいまも記憶に新しい。
その結果、陣容は豪華になった。先発投手陣が、クレイトン・カーショー、グリンキー、ベケット。一塁がA・ゴンザレスで、外野がマット・ケンプ、クロフォード、アンドレ・イーシア。顔ぶれを見ると、2012年の王者ジャイアンツが霞んでしまうくらいだ。