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森田、伊達の「二枚看板」に明暗。
女子テニスフェド杯、激闘の教訓。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAP/AFLO
posted2013/02/12 12:15
左からクルム伊達公子、村上武資監督、森田あゆみ。世界ランク57位の森田が、この大会では日の丸を背負って、そのランキング以上の素晴らしい活躍を見せた。
フェドカップでは何が起きてもおかしくない。
どのチームの監督、そして選手も、必ずこの常套句を頭に入れて対戦に臨む。しかし、この対戦が、最終試合に決着がもつれ込む大接戦になると予想した人がどれだけいただろうか。
女子テニスの国別対抗戦、フェドカップ。日本は2月9日・10日、ベスト4進出をかけ、ロシアと敵地モスクワで対戦した。
日本は1996年のベスト4が最高成績で、上位8カ国からなるワールドグループで戦うのは2007年以来6年ぶりとなる。一方、ロシアは過去4度優勝の強豪だ。世界ランキング3位のマリア・シャラポワらは個人戦を優先させて代表入りしなかったが、それでもトップクラスの選手がそろう。
エースは世界ランク13位のマリア・キリレンコ。20位のエカテリーナ・マカロワもいる。ダブルスも強力で、上記の二人とエレナ・ベスニナの3人がランキング10位以内。したがって、対戦前の興味は、どちらが勝つかではなく、日本がどこまで食い下がれるかにあったというべきだろう。
日本チームの原動力となったのは、世界ランク57位の森田あゆみ。
ところが、シングルス3試合を終えて、日本が2-1と王手をかけた。
赤と白のナショナルカラーを身につけた日本チームの原動力は、世界ランク57位の森田あゆみだった。
初日の第1試合でクルム伊達公子がキリレンコに敗れたが、続く第2試合で森田がマカロワを6-2、6-2と一蹴する。マカロワは地元開催で硬さがあった。地の利は団体戦の行方を大きく左右するが、女子のフェド杯では、ときとしてホームの重圧が選手を苦しめるのだ。
森田は両サイド両手打ちの攻撃的なショットを炸裂させただけでなく、安定感が抜群だった。会心の勝利を、森田はこう振り返る。
「相手はストロークが安定しているし、動きもいい選手。コートのバウンドも遅いので、いいショットを打っても簡単には決まらないと分かっていた。いつも通りの攻めのテニスをしながらも、しぶとくやるべきところはしぶとく、と思って戦った」
1-1で初日を終えた両チーム。第2日の第1試合は、ランキング最上位の選手同士が顔を合わせる決まりだ。
過去1年間、安定した成績を残してきた森田は今、77位の伊達を引き離して、トップ50をうかがう位置にいる。ロシアは、初日のシングルスで伊達を破ったキリレンコが風邪で体調を崩し、代役にエレナ・ベスニナを立てた。代役とは言え、33位は日本のどの選手よりも高いランキングだ。