プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中島裕之は遊撃手で通用するのか!?
先達に学ぶメジャーでの成功のヒント。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2012/12/25 10:31
2年越しのメジャー挑戦の夢を叶えた中島。アスレチックスのビリー・ビーンGMと入団会見に臨み、「ハイ、オークランド!」と明るく語った。背番号は西武時代と同じ「3」。
井口、岩村と共通する中島の“天才”的な右手使い。
2年目も打率2割8分1厘、18本塁打と成績を残し、完全にメジャーの内野手としての評価を得ている。その後は移籍とケガなどで、華々しい活躍を見せることはできなかったものの、それでもこのときの井口と、その後にタンパベイ・レイズでプレーした現ヤクルトの岩村憲明内野手は、確かにチームが獲得して成功したプレーヤーだったわけである。
そしてこの二人の成功者の打撃を見ると、中島も、こと打撃に関しては、必ず通用すると言える共通点があるのだ。
それは日本時代からミートポイントが後ろで、右手の押し込みが強く、フォロースルーが大きいということである。
かつてこのコラムで中島の打撃の天才度を紹介したことがあった。
左手でスイングをリードしながら右手の押し込みでボールを飛ばす。ここまでは普通だが、天才はここからが違う。体勢を崩されたときには、この右手の押し込みでボールを落とす場所を決める。ヤクルトの宮本慎也内野手をして「そりゃムリやろ!」と突っ込ませた“秘技”なのだが、中島は「ホンマですよ?」とニコッと笑って言ってのけた。
もともと非常に近いポイントでボールとコンタクトしても、この天才の右手使いで詰まらずに強いボールを打てる打者なのだ。しかも、ここ2、3年はフォロースルーがどんどん大きくなっている。
井口同様、メジャーを意識して築き上げた中島の打撃スタイル。
統一球が導入された昨年が打率2割9分7厘の16本塁打、今年が打率3割1分1厘の13本塁打と、飛ばないボールをまったく苦にしなかったのもこの技術の結果といえた。
そして何より、ポイントを寄せて右手を押し込み、フォロースルーを大きくとる、というバッティングは、いまのメジャーの最も主流となっている打撃スタイルだということだ。
実は井口も渡米前から、このメジャー流の打撃フォームを念頭に、少しずつ自分のバッティングに改良を重ねて準備をしていたという。
中島もまた、こうしていき着いた打撃フォームは、同じようにメジャーを意識して築き上げたものであり、すでに適応の準備は整っているということなのだ。
そしてあとは遊撃手という、日本人にとっては最も難しいポジションを、どうこなすかだろう。