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中島裕之は遊撃手で通用するのか!?
先達に学ぶメジャーでの成功のヒント。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2012/12/25 10:31
2年越しのメジャー挑戦の夢を叶えた中島。アスレチックスのビリー・ビーンGMと入団会見に臨み、「ハイ、オークランド!」と明るく語った。背番号は西武時代と同じ「3」。
中島がメジャーのショートとして通用する道はあるのか?
「日本人にメジャーのショートはムリでしょう」
もともとはショートだった井口も、こう語って二塁手に転向した。日本では守備力に関しては中島より高い評価を得ていた現阪神の西岡剛内野手は、ミネソタ・ツインズでは殺人スライディングの餌食となって、結局は失格の烙印を押されてしまった。
肩も弱くはないが、ずば抜けた強肩でもない。守備範囲も狭くはないが、それほど広いわけでもない。
そんな中島が果たしてメジャーのショートとして通用するのか?
1人だけお手本になる日本人選手がいる。
今季、シアトル・マリナーズでプレーした川崎宗則内野手だ。川崎の肩はそれほど強くないが、それでもシアトルで遊撃手としてソツなく守りをこなしていた。
「理由はステップワークにあります」
こう分析するのは元巨人ヘッドコーチで、アリゾナキャンプから川崎のプレーを見ていた須藤豊さんだった。
「メジャーでの二遊間の仕事は、いかにゲッツーを取るか。川崎はベースの入り方、二塁からの送球を受けた後のステップの踏み方が非常にうまい。肩がそれほど強くなくても、足を使ってコンパクトにボールを投げられるから併殺もとれるんです」
きちっとしたステップワークさえ身につけられれば必ず成功する!
井口が「日本人にはムリ」と言ったのは、中南米系の選手の身体能力の高さと肩の強さとの比較だった。西岡が殺人スライディングの餌食になったのは、ノーステップで投げようと踏ん張ったところに足が入ったからだった。
きちっとしたステップワークさえ身につけられれば、素晴らしくはなくても、ソツない遊撃手にはなれる。それを教えてくれたのが川崎、ということなのだ。
「もともと内野手でなくプロの世界に入ったけど、そこからコツコツやってきた。僕も派手なプレーができるならやってみたいけど、きっちりしたプレーを常にこころがけていきたいです」
派手なダイブやジャンピングスローはあまり必要ない。きちっとしたステップワークさえ身につけられれば、ナカジはメジャーの遊撃手として、必ず成功するはずである。