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中島裕之は遊撃手で通用するのか!?
先達に学ぶメジャーでの成功のヒント。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2012/12/25 10:31
2年越しのメジャー挑戦の夢を叶えた中島。アスレチックスのビリー・ビーンGMと入団会見に臨み、「ハイ、オークランド!」と明るく語った。背番号は西武時代と同じ「3」。
ナカジが夢を叶えた。
「ビリー・ビーンがかっこいい」という“名セリフ”を名刺代わりに中島裕之内野手が、オークランド・アスレチックスと契約した。
昨年、西武からポスティングシステムでのメジャー移籍を図ったが、入札したニューヨーク・ヤンキースのあまりにひどい契約内容に移籍を断念。そうして改めて今オフ、FA権を行使して移籍先を探していたが、最終的には遊撃手を探していたアスレチックスと2年総額650万ドル(約5億5000万円)というなかなかの契約を結ぶことができた。
アスレチックスのボブ・メルビン監督は、かつてはイチロー外野手のいたシアトル・マリナーズで指揮を執り、昨年のシーズン途中にアスレチックスの監督(当初は代行)になった際には、松井秀喜外野手のよき理解者でもあった。
今回の獲得に当たっては、このメルビン監督がイチローや松井と会食した際に、中島の適性を2人に確認。その2人が太鼓判を押したというエピソードが紹介されていた。両者の高評価はもちろんだが、それより何よりタイプは違うとはいえ、日本人選手の最大の成功例を2タイプ知っていて、しかもその2人と今でも食事をともにできる関係性を築いているところが頼もしい。
そんな指揮官の元でスタートを切れることが、中島にとっては大きなアドバンテージになるのだろう。
「日本人の内野手は成功しない」と言われる中で際立つ井口の存在。
「日本人の内野手は成功しない」
メジャーでこんなことが定説になっているとも言われる。
ただ、期間は短くともそれなりに存在感を示し、チームに「獲得は成功だった」と評された選手がいることを忘れてはならない。
2005年にシカゴ・ホワイトソックスと契約した現ロッテの井口資仁内野手だ。
井口は1年目から「2番・セカンド」の定位置を獲得して、135試合に出場、打率2割7分8厘、15本塁打をマーク。チームも世界一に輝き、実質的には日本人としてワールドチャンピオンリングを初めて手にした選手(過去にニューヨーク・ヤンキースの伊良部秀輝投手も得ているが、伊良部はワールドシリーズのベンチには入っていなかった)となっている。
2番打者としてシチュエーションバッティングなどかなり制約された打席をこなしながらの成績に、当時のオジー・ギーエン監督は「この世界一は井口のおかげだ!」と絶賛したほどだった。