MLB東奔西走BACK NUMBER
“メジャー組”ゼロも悪くない――。
WBCを日本野球の未来に活かす方法。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKyodo News
posted2012/11/18 08:01
侍ジャパンを率いる山本浩二監督。WBCでは、NPB選手だけのメンバーで世界との戦いを強いられることになる可能性が高い。
NPBの底上げを図るためにWBCを利用すればいい。
IBAFでさえこんな状態である。ましてや、大会不参加を切り札にスポンサー権について協議を求めながら、MLBから何一つ妥協を引き出せなかった日本がWBCを変革することなど、到底無理な話だ。それでもNPBの選手たちは国の威信を賭けてWBCに参加することを選ぶのだろうか。
だからといって、WBCの存在意義を根底から否定するつもりは毛頭ない。かつては隔年で実施されていた日米野球がなくなった現在、NPB選手にとってメジャー選手たちと同じグラウンドに立てる機会は、親善試合を除けばこのWBCしか残されていない。
選手が成長する上で、目標を設定したり課題を探るためにも、レベルの高い選手たちとプレーすることは大切なことだ。
ならば、NPBの底上げを図るためにWBCを利用すればいいわけである。そのためにも普段からメジャー選手たちと戦っている日本人メジャー選手ではなく、将来的に成長が期待される若手NPB選手を積極的に起用することが、将来を見据えた戦略といえよう。あくまでWBCは日米野球の延長線だと捉えればいい。
負傷をおしてまで、またシーズンの調整に影響することがわかりながら、無理をして出場する必要があるのかどうか。そう考えれば答えは自ずと出るだろう。そういう意味で、今回の強化試合に招集した若手中心の人選は理想的であり、来年の本番も彼らを主力として戦ってほしいものだ。
侍ジャパン常設化も、マンネリ化の恐れあり!?
また日本国内に目を転じても、今回、NPBは、“侍ジャパン常設化によるスポンサー収入を”ということで日本プロ野球選手会を説得したが、現状ではWBCを除くと、MLBやMLB選手会の許可を得られなければ米国代表はおろかドミニカ代表、ベネズエラ代表などの強豪チームと戦うのは不可能だ。
つまり対戦相手がキューバ代表、韓国代表、台湾代表程度に限られてしまい、結局数年後にはマンネリ化して侍ジャパンの常設化そのものが機能しなくなってしまう恐れがある。
2006年にWBC予選で左肩痛を起こし、そのまま引退へと追い込まれた石井弘寿投手の例もあるように、未だにNPBと選手会の間でWBC参加選手の公傷制度や補償制度が確立されてもいない。
NPB選手たちは、日本人メジャー選手たちがWBC辞退に至った意味を見つめ直してほしい。