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今日の常識は明日の非常識。
風間理論の神髄に触れる。
~風間八宏/木崎伸也『革命前夜』~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2012/10/06 08:00
『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』 風間八宏/木崎伸也著 KANZEN 1500円+税
今季、川崎フロンターレではサッカーの常識を覆す“非”常識な試みが行なわれている。その挑戦の根底にある発想を記したのが『革命前夜』だ。スポーツライターの木崎伸也氏が風間八宏監督の頭の中を解き明かしていく過程は、さながら推理小説のような驚きと発見に満ちている。本書の“探偵役”を担った木崎氏に、風間監督が描く革命の醍醐味とプロセスの一部を再現してもらった。
――木崎さんは南アW杯の前から、次期日本代表監督の候補として風間八宏の名を挙げるほど、早くからそのサッカー理論や発想法に共鳴していましたね。当時は、なかなか理解を得づらい提案だったと思うのですが、本書を読むとその理由がわかる気がします。
「川崎Fの監督に就任する前の風間さんはTV解説者としての知名度はありましたが、世間的には指導者の実績がないという評価だったように思います。でも、筑波大学を率いて実践していたことは、僕のサッカー観を根底から覆すくらい衝撃的でした。この面白いサッカーをどうしたら世にわかってもらえるだろうというジレンマを長らく抱えていました」
「フリーになるために、動かない方がいい時もある」という指導法。
――具体的に言うと、どんなところが衝撃的だったのでしょうか。
「例えば『人を外す』動き。普通は、相手のマークを外すには動き回ることが必要だと思うじゃないですか。でも、風間理論によると『フリーになるために動かない方がいいときもある』ということになります。さらに言えば、パスはスペースではなく足元に出す。これも従来のサッカーの常識からすると、かなり異質な指導法だと思います」
――何だか禅問答のようです(笑)。
「つまり、敵を外すためには、相手の重心の逆をとればいいわけです。右に動くと見せかけて敵の重心が右に傾いた瞬間に左に動いて足元でボールを受ければ、わずか50cmの隙間でもパスはつながる。もちろん、これを連続して行なうには相当な技術が必要になるわけですが、僕が筑波大学の練習で目にしたのはまさにこの光景でした。オシム監督以来『人もボールも動く』がキーワードになって来ましたが、それを超えたところに日本が目指すサッカーがあるのではないかなと」