プロ野球亭日乗BACK NUMBER
黒田とダル、内海と澤村の違いは?
エースの条件は制球力の有無にあり。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/09/03 10:30
内海哲也(左)の今季ここまで(8月31日現在)の成績は23試合に登板して12勝6敗、防御率1.79。澤村拓一(右)は23試合登板で9勝9敗の防御率2.66。
110球で完投可能な黒田と、7回が辛いダルビッシュ。
ダルビッシュの奪三振は1試合平均10.6個に対して、黒田は6.7個と約4個少ないが、投手の制球力の目安と言われる奪三振数を与四球数で割ったK/Bは、ダルビッシュの2.22に対して黒田は3.28と1ポイント以上も上回る。110球程度を降板の目安にしている黒田は、その球数でほぼ8回から9回まで到達できる。ダルビッシュの場合は、8月6日のレッドソックス戦では6回2/3で123球を要しマウンドを降りざるを得なかった。投げてみないとどこまでいけるか分からないのが現状だ。
そしてこの黒田の凄さは、キャンプの練習から培われてきたものだった。2月に聞いた槙原さんの話は、そういうことだったわけだ。
黒田とダルの関係に、巨人の内海と澤村の姿がダブる。
黒田とダルビッシュ――。メジャーで活躍するこの二人の投手の違いを考えたとき、思わずダブって感じたのが巨人の内海哲也投手と澤村拓一投手のピッチングだった。
「メジャーでは先発投手の最低の仕事は6回を3失点以内に抑えるクオリティースタートだけど、登板間隔が週1回と長い日本ならもう1回増えて7回を3失点に抑えるのがクオリティースタートとなるね」
こう語るのは巨人の原辰徳監督だ。
前回のコラムで書いたが、統一球の導入で原監督は「今の野球は3点を境にした攻防」と指摘する。
投手は相手を3点以内に抑え、打線はどうやって4点目を取るか。そのために先発投手に許される失点は3点、その失点で最低7回は持ちこたえるのが、ローテーション投手の責任だということだ。
今のままの澤村ではエースになれる資格はない!?
結果からみると、澤村の投球内容は、もう一つその責任を果たしきれてはいない。
今季23回の先発で澤村が7回を投げきって3失点以内で抑えたのは10回。原流QS率は43%ということになる。
一方の内海は同じく23回の先発で原流QSは13回。QS率は57%と6割近くの数字を残している。
「結局は真っすぐを含めた制球力の問題」
こう指摘していたのはある巨人OBだ。
「内海は真っすぐの速さはもはや超一流とは言えないかもしれないが、ストレートを含めたボールのキレと制球力は一流といえる。澤村は真っすぐの威力は超一流だけれど、真っすぐを含めた制球力と変化球のキレは厳しく言えば二流。そこを磨かない限り、長いイニングは持たない」
澤村がエースに育つための試金石は、真っすぐの威力ではなく制球力というわけだ。