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ワンランク上の投手になるために……。
いま斎藤佑樹に必要な「剛」の投球。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2012/08/29 11:20

ワンランク上の投手になるために……。いま斎藤佑樹に必要な「剛」の投球。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

7月30日から二軍暮らしが続いている斎藤佑樹。「最低でも2試合は下(二軍)で投げてもらう」(吉井理人投手コーチ)と早期昇格の可能性もあったようだが、二軍で4連敗。防御率は6.35と低迷を続けている。

 斎藤佑樹が、二軍であえいでいる。

 練習試合も含めると4試合に登板し、4連敗。いまだ勝ち星がない。

 しかし、斎藤は、そもそも二軍で力を発揮するようなタイプではなかったのだ。

 先日、春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督、西谷浩一が、斎藤のことをこんな風に評していたことがある。2006年夏、大阪桐蔭は斎藤を擁する早実と2回戦でぶつかり、2-11で大敗している。

「彼のイメージは、メキシコ出身の何十勝もしているような老獪なボクサー。強そうじゃないんだけど、やってみるとうまさがわかる。こっちがパンチを打っても、その瞬間、ちょっと踏み込んだり、ちょっと引いたりして、相手の力を半減させる」

 試合中、西谷はベンチの中で何度も「何で振らんねん!」と叫んでいたという。

「高校生レベルだったら配球はだいたい読める。だから、カウントを取りにくるボールをねらっていた。でも、変化球がくるとわかっていて振りにいってるにもかかわらず、バットが出ない。選手に聞くと『ずらされてます……』って言うんです。おそらく、斎藤君は相手の出方を見ながら、間合いをずらしていたんだと思います」

 斎藤はその頃、「相手が打ってくるかどうか、だいたいわかる」と話していた。そうして相手の気配を察知しながら、微妙に球速やコースを変えていた。

 柔よく剛を制す――。それが斎藤の持ち味だった。

己の力だけで圧倒するような「地力」をつける時期がきた。

 強打者になればなるほど相手の力を利用しつつ、ボールの威力を倍増させる。そう、ボクシングで言うところのカウンターパンチのようなものだ。

 ただし、「メキシコの老獪なボクサー」は、相手が強者だからこそ強みを発揮するのであって、相手の力が落ちると往々にしてそれなりのボクシングしかできなくなってしまうものだ。つまり、斎藤は、相手が一軍だったからこそ、通用したのではないか。二軍の打者と対戦したら、途端に二軍の投手になってしまう。

 しかしもはや、そんな「テクニック」だけでは一軍でも通用しない――ということなのかもしれない。

 プロで長くやるためには、相手の力を利用するだけでなく、己の力だけで圧倒するような「地力」をつけなければならない時期にきているのだ。

【次ページ】 甲子園の決勝以上に鮮烈だった、西東京大会の決勝戦。

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