日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ロンドン世代を熟知した関塚監督に、
A代表コーチ復帰の道はないのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2012/08/29 10:31
ロンドン五輪では前評判を覆し、ベスト4に導いた関塚監督。今後の去就が注目される。
過去のA代表監督も日本人コーチを右腕にしていた。
たとえばフランス人のフィリップ・トゥルシエの右腕についたのは山本昌邦コーチだった。指揮官がエキセントリックに指導していく一方で、山本は選手たちに目を向けて声をかけていた。トゥルシエの目が届かないところをうまくフォローしていた。
逆にジーコ体制ではブラジル人スタッフが中心となり、ヘッド格の日本人コーチを置かなかった。これはジーコが鹿島アントラーズの発足時からチームづくりに参加し、日本を熟知しているということが背景にあった。
それでも2004年2月のドイツW杯1次予選オマーン戦のあとに当時の川淵三郎会長が直接会談して日本人コーチの加入をジーコに打診している。「ジーコの良きパートナーとして、日本人スタッフが一人加わったほうがいい」という考えに基づくものだった。結果的にジーコがその提案をやんわりと拒否したため実現しなかったが、惨敗に終わったドイツW杯を見てもスタッフのテコ入れの必要性を感じた関係者は多かったはずだ。
一転して続くイビチャ・オシム体制になるとスタッフはすべて日本人コーチで固められた。反町をはじめ、大熊清、小倉勉がコーチに加わっている。協会としてはオシムのもとで指導方法を吸収させる意図もあり、反町は五輪代表の活動が始まっても日程が空けば、A代表のコーチとしても積極的に活動を続けていた。オシムの練習の意図を、ピッチ上で反町コーチが噛み砕きながら選手に説明していたことが思い出される。
このように外国人監督を招いた際は、日本人コーチの存在の有無がいつもクローズアップされてきたと言える。
関塚の退任後、日本人コーチ補充の予定はないが……。
だが、現在のアルベルト・ザッケローニ体制では関塚が抜けた後、日本人コーチの補充には至っていない。ヘッド格にステファノ・アグレスティがいてGKコーチにマウリツィオ・グイード、フィジカルコーチにエウジェニオ・アルバレッラと3人のイタリア人コーチがいる。日本人もアシスタントコーチに分析担当の和田一郎、コンディショニングコーチに早川直樹がおり、うまくチームが回っている以上、ザッケローニとしても協会としてもこれで十分と思っているのだろう。現時点で結果は出ているし、確かにここで体制をいじる必要はないかもしれない。
ザッケローニは選手とのコミュニケーションを重んじており、選手も6月の最終予選に向けた合宿中では「負荷を減らしてほしい」と直接伝えて了承されるなど、コーチが仲介役とならなくとも意思の疎通は図れている。