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バッテリーが怖がる“次打者の陰”!?
巨人の打線組み換えが奏功した理由。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/07/24 10:31
前半戦を終えて、打率.307、出塁率.414でリーグトップの成績を残した阿部。得点圏打率も.348でリーグ2位と、勝負強さを遺憾なく発揮している。
4番・村田、5番・阿部のオーダーで一気に借金完済。
4月は投手が抑えても、打線の得点力が極端に低く苦しい試合の連続だったが、低迷脱出の転機となったのは原監督のオーダー組み替えだった。
4月26日のDeNA戦でまず3番の長野を1番にして、得点圏打率でリーグ1位争いをしていた坂本勇人内野手を3番に据えるオーダー変更をした。
そして阿部が腰痛を訴えて、5月1日の広島戦から5試合欠場すると、代役4番に村田を指名(このときは5番が高橋由伸外野手)。阿部が復帰した同8日のDeNA戦以降も、阿部を5番に入れて、4番・村田を動かさなかったのだ。
結果的には、これがその後の逆襲につながることになる。
1番と3番を入れ替えた4月26日からチームは4連勝。そして4番・村田、5番・阿部の並びとなった5月8日以降は9連勝(チーム的にはその前から含めて10連勝)と巨人はビッグウエーブをつかんだ。その勢いに乗って一気に借金を返済し、交流戦優勝、首位奪取と階段を駆け上がってきたわけである。
「バッターは次の打者に守られている」と原監督は語る。
結果的には「4番・村田」効果で巨人は活性化されたように見える。だが、実はこの打線組み替えの成功には、もっと大きな要素が隠されていた。
「打線というのは、次の打者との相乗効果で点が線になる」
原監督はこう語る。
「バッターは次の打者に守られているということなんです。ウチで言えば坂本は村田に守られ、村田は阿部に守られ、阿部はヨシノブ(高橋)に守られている。そのつながりができたことが、打線がうまく回るようになった理由なんです」
分かりやすく言えば、相手バッテリーは常に目の前の打者と次の打者とを天秤にかけて勝負をしているということだ。次打者のプレッシャーが大きければ大きいほど、打席の打者は有利な立場で投手と対峙できる。その前後の連係がうまくいけば、個々の打者が点ではなく、線としてつながって打線は活性化するということなのである。
そしてその端的な例が4番・村田、5番・阿部という並びだったわけだ。