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バッテリーが怖がる“次打者の陰”!?
巨人の打線組み換えが奏功した理由。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/07/24 10:31
前半戦を終えて、打率.307、出塁率.414でリーグトップの成績を残した阿部。得点圏打率も.348でリーグ2位と、勝負強さを遺憾なく発揮している。
結果的には「4番・村田」が巨人を活性化させた形になっている。
今年の開幕前、ちょっと話題になったのが、巨人の4番は誰が適任か、ということだった。
「今年の4番は阿部でいく」
キャンプの早い段階から、原辰徳監督は阿部慎之助捕手を4番に指名し、打線の軸として、チームの顔として、本人も4番に意欲的な発言を繰り返していた。
ただ、阿部にはもう一つ、捕手として投手陣をリードしていかなければならないという重責もある。
「私なら思い切って長野を4番に抜擢する」
こう言ったのは元楽天監督で評論家の野村克也さんだった。
「阿部は捕手として守りの面での役割が大きい。それを考えると4番では負担が大きすぎるので、私ならここは将来性も買って長野を4番に起用する」
プロ3年目の長野久義外野手を推したノムさんの論理は、確かこんなものだったと思う。
開幕ダッシュに大失敗し、早々と「優勝は無理」との報道まで。
その一方でオフにフリーエージェントで移籍してきた村田修一内野手を4番に推す声は、皆無に近かった。
「得点圏打率が低い」
「打てないときにメディアからのプレッシャーが強い巨人では4番はムリ」
そんな声が“4番村田否定論者”の論拠だった。
そして結局、当初の考え通りに原監督は開幕オーダー表には3番・長野、4番・阿部、5番・村田という並びを書き込んだわけだ。
だが、ご承知のように今年の巨人は開幕ダッシュに失敗。2度目の5連敗を喫した4月22日時点で借金は7まで膨れ上がった。巨人の歴史上、借金7以上からの逆転優勝は過去になく、スポーツ紙紙上に「巨人V確率0%」という見出しが躍ったのもこの頃だ。
そんな惨状から巻き返しが始まったのは、開幕から1カ月が経過した4月末からだった。そしてオールスターブレークをはさんだ折り返し点では、貯金20で2位中日に4.5ゲーム差をつけての首位ターンとなった。