MLB東奔西走BACK NUMBER
ダルビッシュの発言を真摯に聞け!
WBC参加問題の元凶を考える――。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph bySports Graphic Number
posted2012/07/27 10:32
ツイッターでの発言がしばしば注目を浴びている、ダルビッシュ有投手。メジャーに行って気がついたこと、日本球界への疑問など率直な思いを吐露している。
ダルビッシュがメジャーで感じた率直なWBC観。
冒頭のダルビッシュの発言は、今シーズンからメジャー選手の1人として内側から他の選手と接した上で感じた、メジャー選手たちの率直なWBC観だ。
これまで、このような発言は表立って出てこなかったが、現在メジャーに在籍している日本人選手、およびメジャーの取材を続けている日本メディアのほとんどが感じていることだろう。
自分自身も、過去2回のWBCを取材し参加選手から話を聞き、その印象はダルビッシュとまったく変わらないものだった。いずれのWBCでも真剣勝負を挑んでいたのは日本、韓国、キューバの3チームだけだった。その現場の空気を知っているだけに、日本のメディアが大々的に“世界一”と大騒ぎする姿に温度差を感じずにはいられなかった。
実は日本がWBC連覇を達成した直後に自分の率直な気持ちをまとめ、『日本は本当に世界一になったのか?』と題したコラムを書き上げた。ことのほか大きな反響を得たのだが、基本的には「侍ジャパンの偉業に水を差すな」、「日本だってベストメンバーが揃っていたわけではないし、他のチームがベストメンバーでなかったことを理由に文句をつけるべきでない」等の否定的な反応だった。
だが自分は日本代表チームのWBC連覇に疑問を呈したのではなく、あくまで“WBC優勝=世界一”という捉え方を受け入れられなかったのだ。ある意味、無造作に“世界一”と報じ続けたメディアにも罪があるはずだ。
第2回大会では、米国代表チームから軽傷の選手たちが次々に離脱。
WBCは国の代表といってもチームでプレーする機会は皆無であり、しかも大会開始直前、キャンプ途中の選手たちが集まって数日間の練習とオープン戦のみで本大会に突入する。
メジャーの選手は開幕を控えた状態でコンディショニング自体も決して万全なものではない。その時点で、WBCに対するメジャーの選手たちのモチベーションがどれほどのものなのか窺い知れるだろう。
実際、第2回大会では、米国代表チームの選手の何人かは軽傷であるにもかかわらず所属チームから呼び戻され、次々に戦線を離脱。しかも代替選手の招集は行なわれず、決勝にすら進出できなかったのだ。