MLB東奔西走BACK NUMBER
ダルビッシュの発言を真摯に聞け!
WBC参加問題の元凶を考える――。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph bySports Graphic Number
posted2012/07/27 10:32
ツイッターでの発言がしばしば注目を浴びている、ダルビッシュ有投手。メジャーに行って気がついたこと、日本球界への疑問など率直な思いを吐露している。
WBCの本質はMLBの資金源となる国際興行イベント。
「早く決められれば一番いいが、そうはいかないでしょう。米国も3大会連続で負けるわけにはいかないと思っているだろうし勝つことは大変だ。じっくりと考えなければいけない。最後はもちろん三顧の礼をもってお願いする」
加藤コミッショナーが先月発言していたものだ。コミッショナーの真意はわからないが、本当に「米国も3大会連続で負けるわけにはいかないと思っている」と考えているのなら、あまりに実情を知らなすぎるし、こんなコミッショナーに任せておいていいのだろうかと心配してしまう。
だがむしろ、実情を知りながらこういった発言をしているのであれば、もっとタチが悪い。WBCをいかにもサッカーのワールドカップのような国際大会だという認識を植え付けるため、代表チームのスポンサーやファンを欺いている行為に他ならないからだ。
確かにWBCがプロ選手も参加できる唯一の国際大会になったのは事実だ。昨年12月に開かれたIBAF(国際野球連盟)総会で、ワールドカップとインターコンチネンタルカップの廃止が決議されるとともに、WBCが世界一を決める国際大会として承認された。
しかし、実際は単独運営が難しくなったIBAFがMLBから資金援助を受けた交換条件ともいわれている。MLBの思惑通りWBCが国際大会としてのステータスを手に入れようとも、その本質はMLBの大切な資金源となる国際興行イベントの域を超えてはいない。
ダルビッシュの発言を無駄にしてはならない。
もし仮にMLBが本気でWBCを真の国際大会にしたいと思っているのなら、真っ先に選手たちがベストの状態で戦えるよう大会開催期間の変更を考えるはずだ。だが、彼らはずっとWBCの開催時期は3月しかないという主張を変えていない。
しかも各国代表チームが選手の優先招集権を持っていないのだから、シーズン開幕前のこの時期にMLB各チームが素直に選手を送り出すはずもない。
何も日本代表チームはWBCに参加すべきでないと主張しているのではない。個人的には真剣度は別にして、一流選手たちの国別対抗戦は単純に面白いし、日本代表チームにも参加してほしいと思っている。
だがWBCの本質をきちんとファン、スポンサーに説明することもなく自分たちの都合、思惑だけで見切り発車を続けている現状は問題があり過ぎる。NPBが現在のような対応を続けていけば、結局はファンの信頼をも失ってしまうことに気づいてほしい。
絶対にダルビッシュの発言を無駄にしてはならない。