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日本水泳、惨敗からの躍進。
強い「チーム」のつくり方とは。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byGetty Images
posted2012/07/17 10:30
4月9日に行われた競泳のロンドン五輪代表選手発表会。前列左から、星奈津美(バタフライ)、寺川綾(背泳ぎ)、鈴木聡美(平泳ぎ)後列左から、松田丈志(バタフライ)、入江陵介(背泳ぎ)、北島康介(平泳ぎ)、平井伯昌ヘッドコーチ。
個々の役割が違うからお互いに補完ができる。
この考え方は、「個が勝つために、チームで勝つ」ためのチーム作りをすることにも当てはめることができよう。
チームは、個の補完のためにあると筆者は思う。そして補完されない「個」はぜい弱なのである。そのバランスを取るのがチームではないだろうか。補完するには、似た者同士ではなく、個がそれぞれ違った役割(特徴、視点を含む)を持つことが必要である。補完をすることで、それぞれの個がますます活かされる。そのためにこそチーム作りが必要なのだと考える。
コーチの相互補完と選手のコミュニケーション。
話を競泳に戻すと、1人の選手に1人のコーチがずっとついている状態では、バランスどころか1つの視点でしか指導できない。指導の補完がなされない。そこに様々なタイプのコーチが存在し、問題意識や指導法を共有することで、コーチが互いに補完し合っているからこそ、各コーチの指導法が活かされ、ひいては個々の選手の能力発揮にもつながる。
これは、選手間でも同じである。選手は選手でそれぞれの役割を全うしているのであろう。選手、コーチ、スタッフがチームとなっていることに今の競泳日本代表の強さがある。
コミュニケーションの活性化の裏に、このように1人1人の役割があることを理解し、その意義を感じたからこそ競泳日本代表はチームで勝つことにまい進できたのではなかろうか。
ちなみに、日本の競泳界を代表する北島康介選手は、代表選手のなかで最年長の29歳。一方、男子個人メドレーの萩野公介選手は17歳。女子平泳ぎの渡部香生子選手にいたっては15歳。いずれも現役高校生である。
こうした若い選手が、オリンピックの舞台で様々な経験を積み、やがて日本のチームを牽引する存在になってくれることを期待したい。