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日本水泳、惨敗からの躍進。
強い「チーム」のつくり方とは。 

text by

葛山智子

葛山智子Tomoko Katsurayama

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photograph byGetty Images

posted2012/07/17 10:30

日本水泳、惨敗からの躍進。強い「チーム」のつくり方とは。<Number Web> photograph by Getty Images

4月9日に行われた競泳のロンドン五輪代表選手発表会。前列左から、星奈津美(バタフライ)、寺川綾(背泳ぎ)、鈴木聡美(平泳ぎ)後列左から、松田丈志(バタフライ)、入江陵介(背泳ぎ)、北島康介(平泳ぎ)、平井伯昌ヘッドコーチ。

前評判の高かったアトランタ五輪で惨敗

 個人競技であるのに、なぜチームで戦う必要性があるのだろうか。 

 競泳では、一人のコーチが長年にわたり同じ選手を指導することが多い。付き合いが長くなればなるほど見えてくる選手の変化があるのだという。

 一方で、付き合いが長いがゆえに気付かないようなちょっとした変化もある。そうした変化は、第三者的な関わりのできる他選手のコーチのほうが目に留まりやすいのだそうだ。

 しかし、個人もしくは所属スイミングクラブごとに独自の指導方法があり、それ故に対抗意識が強かった競泳界では、他のクラブに所属する選手・コーチとは情報共有をあえてしない状況だった。つまり個々の選手の能力が高くても、その能力を活かしきれない組織としての壁が立ちはだかっていたのである。

 その結果、1996年アトランタ大会では、選手の能力など前評判が高かったにもかかわらず、メダルが獲得できずに終わった。

上野監督が形成した真の「代表チーム」。

 この惨敗をきっかけに、「個が勝つために、チームで勝つ」方向性に舵を切り始めた。その先導役となったのが、シドニー大会で競泳日本代表のヘッドコーチを、そして北京大会・アテネ大会で競泳日本代表監督を務めた上野広治氏である。

 上野氏は、コーチ間、選手間、そして選手―コーチ間のコミュニケーションを活性化し、スイミングクラブ間の垣根を取り払うことに努め、クラブ対抗ではなく「代表チーム」を真の意味で形成。競泳日本代表を躍進させた。選手同士が互いに応援する姿を会場で見られるようになったのもこの頃からである。

なぜチームだと勝てるのか。

 ここで、競泳日本代表チームではどのようにコミュニケーションを活性化させたのか、という点も重要なのだが、実はテクニックだけを真似ても必ずしも成功に結びつかない。

 その前に「なぜチームだと勝てるのか」という点における理解と「どのようなチームをつくりたいのか」「何を目的としてチームをつくるのか」について考えておく必要があろう。 

 つまり、そもそもチームは何のために存在するのかということに対する理解と、チームで勝つ意義である。

【次ページ】 チームの資源配分を考えるPPM。

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