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日本水泳、惨敗からの躍進。
強い「チーム」のつくり方とは。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byGetty Images
posted2012/07/17 10:30
4月9日に行われた競泳のロンドン五輪代表選手発表会。前列左から、星奈津美(バタフライ)、寺川綾(背泳ぎ)、鈴木聡美(平泳ぎ)後列左から、松田丈志(バタフライ)、入江陵介(背泳ぎ)、北島康介(平泳ぎ)、平井伯昌ヘッドコーチ。
チームの資源配分を考えるPPM。
チームの在り方を考える際には、経営戦略における資源配分を考える上で使われるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)というフレームワークの考え方も応用できよう。本来PPMというのは経営戦略で語られるフレームワークであるのだが、チームワークを考える上でも活用ができるように思う。
PPMとは複数の事業、製品群を持つ企業が最も効果的に資源配分にはどうすればよいかを考える際に使われるフレームワークである。縦軸に市場成長率の高低、横軸に相対マーケットシェアをとり、各事業もしくは各製品をこの4象限上にプロットしていく。
PPMにおける「金のなる木」はキャッシュフローを生み出す事業、「スター」は市場の成長に合わせた投資が必要な事業、「問題児」は多大な投資が必要な事業(赤字であることが多い)、そして「負け犬」は強さが発揮できずに撤退の検討の必要性もでる事業である。円(バブル)の大きさはその売上規模を表している。
金のなる木と問題児の存在意義。
もし読者の勤める企業のPPMを作成した時に、キャッシュフローを生み出す「金のなる木」に事業が集中していたとしたら、読者はどのような反応をするだろうか。
このPPMで重要なのは、企業という共同体(チーム)の中でいかにバランスをとって全体で勝っていくかを考えることである。
「金のなる木」に入る事業もいずれ衰退していく。「金のなる木」ばかりを持っていることは、企業の将来の成長にとってバランスを欠くのである。
その時に必要なことは、まだキャッシュフローを生み出す事業があるうちに、その利益を、いずれ「スター」や「金のなる木」に育つであろう新規事業、つまり「問題児」に投資をしておくことである。そこで多大な投資をされた事業は、赤字の状態になることもあろうが、将来の「金のなる木」になるのを目指し積極的な投資対象になる。
「金のなる木」は、その経営資源を輩出する役割を果たす。「金のなる木」があるからこそ新規に投資を必要とする事業(問題児)を育てることができる。そし「て問題児」の事業を育てることができれば、「スター」になり、やがて「金のなる木」になる可能性が高まる。つまり「問題児」があるからこそ、企業が持続的に成長するストーリーが描けるのである。
企業の成長を考えても、全事業が同じ1つの役割しか担っていなければ、バランスが悪いのである。1つ1つの事業にそれぞれの役割を持たせることが、企業の持続的成長のカギになる。