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自己主張と調和を融合した、
長友流「異文化への対処法」
~長友佑都・著『上昇思考』を読む~
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph bySports Graphic Number
posted2012/06/20 06:00
『上昇思考 幸せを感じるために大切なこと』 長友佑都著 角川書店 1300円+税
対抗型の中田英とも、調和型の長谷部とも異なる長友。
ヨーロッパでプレーする海外組には、日欧の文化ギャップの対処法に大きく分けて2パターンある。
〈対抗型〉 中田英寿、本田圭佑、安田理大など。自己主張の波に対して、自己主張で対抗するタイプ。
〈調和型〉 奥寺康彦、長谷部誠など。自己主張に対し、「調和できる」という個性で立ち向かうタイプ。近年アジアで最も成功したパク・チソンもこのタイプ。
長友は見事な〈折衷型〉であることに気づく。渡欧当初は「消極的な人間というイメージがつくられてしまわないように」、少し背伸びした。そして現在は日本人らしいメンタリティで存在感を示す。チームメイトのスナイデルに「礼儀正しく、自己犠牲の精神をもっている」と評され、「なんだかこそばゆく」なったという。
本書で長友の「心」が解明された。体幹トレでの「体」の凄さも知られるところ。じゃあ次は「技」も知りたいと思うのだが。右サイドバックから左にコンバートされて4年、左足のキックが飛躍的成長を遂げた。以前のように右足に持ち直してセンタリングする場面が減っている。本書を含め、なぜかどこもこの点を解明していない。読んでみたいところだ。