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自己主張と調和を融合した、
長友流「異文化への対処法」
~長友佑都・著『上昇思考』を読む~ 

text by

吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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posted2012/06/20 06:00

自己主張と調和を融合した、長友流「異文化への対処法」~長友佑都・著『上昇思考』を読む~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『上昇思考 幸せを感じるために大切なこと』 長友佑都著 角川書店 1300円+税

 最近は、流行の「体幹トレ」の成功事例としても有名な長友佑都が、今回は“メンタル”をテーマにした一冊を上梓した。5月25日発行の『上昇思考 幸せを感じるために大切なこと』では、人間のすべては心で動いている、という点を強調している。前向きで向上心をもった思考ができていれば、人生は大きく変わると説く自己啓発本だ。

 前作の自叙伝『日本男児』から、インテルでの近況が更新されている。じつは最近まで、ビッグクラブでのプレーに自信がなかった点などは意外な発見だった。

 いっぽう、こういう読み方もできるのでは、と思った。

 欧州で感じる、猛烈な異文化への対処法だ。今、日本の海外組がぶち当たっている壁への向き合い方としても、興味深い証言がちりばめられている。長友は本書にこんな言葉を記した。

「インテルの選手たちのメンタリティは、ひと言でいって図太いくらいだ。日本人全般に対しては、謙虚で、何事に対してもセンシティブだというように指摘されることが多い。それはそれで美徳といえるにしても、サッカーのプレイ面ではマイナス影響も出てきてしまう」

1日10分間の「自分と向き合う時間」を実践。

「海外には自己主張の気持ちが強い選手が多いものなので、積極的に自分をアピールしていかなければ、存在はどんどん薄れてしまう」

 欧州のピッチとは、日本よりもはるかに猛烈な自己主張が衝突する世界なのだ。

 この文化ギャップにどう対処したのか。

 2010年7月にチェゼーナに移籍したばかりのころは、「ジェスチャーで『ボールをよこせ』『前に出ていけ』と意思表示するなどして」いた。自分の存在が消えないよう心がけたという。結果「お前は日本人っぽくないな」と言われた。

 しかし、インテルで自信を持って「世界一のサイドバックを目指す」今は違う。本書で度々登場する「感謝の心」「自分が世界一幸せ」「苦しい時こそ、いい経験と思う」といった思考は、じつに謙虚で、日本的なメンタリティにも見える。

 なかでも、最近本人が実践しているという1日10分間の「自分と向き合う時間」は象徴的だった。

「自分のなかで不平や不満が出ているようなときには、それをよく見つめ直してみるのもいいだろう。エゴの元にもなるこうした感情をもってしまうのは人として仕方がないこと(中略)。心の中でエゴなどの負の感情がどう動いているかを見つめておく」

 まるで、仏教の「瞑想」の世界だ!

【次ページ】 対抗型の中田英とも、調和型の長谷部とも異なる長友。

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