日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
“本気のオーストラリア”とどう戦う?
敵地決戦で日本代表に必要なこと。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2012/06/11 12:20
前田遼一、本田圭佑(3得点)、香川真司、栗原勇蔵らによる計6得点のゴールラッシュとなったヨルダン戦。これまでホームでの2試合で快進撃を見せたザックジャパンだが、6月12日、“最大のライバル”オーストラリア戦は初のアウェーでの戦いとなる。
有言実行――。
6月8日のヨルダン戦の大勝劇はそのひと言に尽きる。
初戦、オマーンに3-0で勝利した後、先制点を挙げた本田圭佑は表情を変えることなくこう言い放っていた。
「勝てばOKじゃない。アウェーで戦うときに相手に『(日本とは)もうやりたくない』と思わせるほどじゃないとダメ」だと――。
初戦に引き続き、6万の大観衆をのみこんだ埼玉スタジアム。
キックオフの瞬間、本田の決意が見てとれた。彼は一旦ボールを後ろに下げるのではなく、前にいる香川真司にパスを出して前を向かせようとした。筆者の目にはヨルダンがたじろいだように見えた。のっけからネジを巻いてくる日本に対し、スタートから受け身に回らざるを得なくなった。
張り詰めた集中力、叩きのめすという共通意識。立ち会いに勝ったザックジャパンが一気にゴールに襲いかかりそうなムードが漂った。前半だけで電光掲示板のスコアに「4」も刻まれるとは思わなかったが……。
前線にいた誰もがゴールに固執した結果のゴールラッシュ。
誤解なきよう言うが、ヨルダンがいたずらに無力だったわけでは決してない。遠藤保仁、長谷部誠、そして本田のところにボールが入ってくるところを狙おうとした。また、本田にはボランチの一人をマンツーマン気味に対応させるなど、日本を研究したうえで戦いに臨もうとしていた。
しかしながらヨルダンを受け身に回らせたことで日本のほうが優勢となる。遠藤、長谷部、本田のところで数的優位をつくってパスを回し、ディフェンスラインの裏を狙おうとした。特に岡崎慎司に対するマークが甘く、サイド攻撃を繰り返されたことでヨルダンのディフェンスは思考停止状態に陥ったのだった。
チャンスを多くつくっていれば、必ずどこかでゴールにつながる。
前半18分、チーム6本目のCK。本田がファーサイドにボールを送り、前田遼一が先制点を挙げると、ゴールショーが幕を開けた。
遠藤、長谷部の両ボランチが積極的に前線に絡み、数的優位から決定的なチャンスを生み出していく。先制点の3分後には、遠藤の縦パスに裏を取った本田が流し込んで2点目。続いても遠藤から右サイドの裏に出た岡崎がシュートを放ち、詰めていた本田が3点目をもぎ取った。
相手のGKは動揺を隠せないようにミスフィードし、昨年のアジアカップで日本相手にあれだけ勇敢に戦っていたヨルダンの面々は明らかに腰が引けていた。
オマーン戦で見せたような裏への執拗な攻撃と、叩きのめしてやろうという気概が生んだゴールラッシュ。前線にいた誰もがゴールに固執していた。だれない、集中力が途切れない。気を緩めることなく香川が4点目を奪った、チームのそのしたたかさには舌を巻くほかなかった。