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佐藤寿人は招集されるべきか?
ザック選考の裏にある戦略とは。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/06/10 08:02
J通算100ゴールも決め、得点ランキングを独走する佐藤寿人。苦労人ながらまだ30歳、円熟の時を迎えている。
かつてあれほど騒がれた“海外組”と“国内組”にまつわる議論が、今はほとんど聞こえてこない。
8年前や4年前のそれとは異なるポジティブな雰囲気で幕を開けたW杯アジア最終予選。その初戦となったオマーン戦でベンチ入りした23名のうち、海外組はほぼ半数の11名。スタメンでピッチに立った11名においては、前田遼一、遠藤保仁、今野泰幸を除く8名が海外組と大勢を占めた。後半には海外挑戦が秒読みと見られている酒井宏樹、今夏の渡独が決まっている清武弘嗣、さらに海外でフルシーズン1年目を終えた細貝萌が送り込まれ、ベンチにはハーフナー・マイクと宮市亮も控える。どうりでそんな議論に発展しないほど、現日本代表の主力は海の外を主戦場とする選手が多い。
“海外組”重用の傾向はジーコ時代に端を発するが……。
そもそもこの議論は、ジーコ・ジャパン時代における海外組の急速な拡大に端を発する。
'02年日韓W杯で世界への扉を開いた当時の日本サッカー界では、その道の先陣を切った中田英寿を筆頭に、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一、高原直泰、柳沢敦ら“メジャー”を目指して海を渡るサムライが続出した。もちろん、彼らは世界に認められた才能の持ち主である。その才能を集めて組織が機能すれば、より質の高いチームが完成することは間違いない。指揮官ジーコがその可能性に賭けてみたくなるのも分かる。
ただ一つ、疑問視されたのは、印象として強く残った海外組に対する過度の厚遇だった。大ざっぱに言えば、“非本番”は国内組中心、しかし“本番”では海外組が取って代わり、レギュラーの座に収まる。海外組の多くが所属クラブで満足な出場機会を得られなかったことも根拠となって国内組の不満は募り、チームとしてのスタイルが確立されなかったことでジーコの手腕は疑問視された。
加えて'04年夏、国内組中心のメンバーでアジアカップを制したこともこの議論に拍車を掛けた。とはいえジーコ・ジャパンの初陣となった'02年10月のジャマイカ戦では、中田、中村、小野、稲本が並ぶ中盤を誰もが「黄金」と称えていたのだから、やはりプロスポーツの世論は移ろいやすい。
あれから時は流れ、“今”を戦うザック・ジャパンの内側からそんな議論は浮上してこない。しかし果たして、海外組が大勢を占める現日本代表の顔ぶれは「適正」と言えるのだろうか。