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驚異の高卒新人、ハーパーとトラウト。
規格外の才能を伸ばすMLBの育成術。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/06/13 10:30
4月28日のドジャース戦でメジャーデビューを果たしているブライス・ハーパー。打撃好調もさることながら、毎試合“魅せる”プレーの連続で、全米にブームを巻き起こしつつある。
ハーパーを上回るOPSを誇るトラウト。
そのトラウトの成績は次の通りだ。
打率 .331
出塁率 .385
長打率 .547
ということは、OPSは.932となり、ハーパーを上回る。
まさに破格の選手ふたりが2012年はデビューしたことになる。
ふたりの成功は「高卒<大卒」の常識を飛び越えた。
ハーパー、トラウトの活躍でメジャーの球団は発想がずいぶんと変わってきた。
10年ほど前は、マイケル・ルイスの傑作、「マネーボール」でも指摘されていたように高卒は育成に時間がかかるし、大卒の方が成功する確率が高いとされてきた。大学という場での生存競争に勝ち残った選手を獲得するからだ。
大学生の育成過程は計算が立ち、一般的には6月のドラフトで指名して夏に契約。秋季リーグなどでプレーして、翌年はマイナースタート(トリプルA)。契約の関係もあって、夏場になってからメジャーに引き上げるというのがパターンだった。
ところが高卒の選手だと、シングルAからスタートする場合が多く、育成に時間がかかると見られていた。しかし、ハーパーやトラウトのようなタレントを持った選手であれば、20歳前後で十分な戦力になることが証明されたのだ。
高卒選手の将来性を押さえ込む、日本球界の育成方法。
アメリカと比較して、日本では高卒の大型野手が少なくなっているのが気になる。
たとえば、2009年に東海大相模から鳴り物入りで巨人に入団した大田泰示。プロに入って4年、出場試合はまだ19試合だ。
同期には日本ハムの中田翔がいる。彼は昨季、レギュラーに定着したが、今季は打率が1割台の不振。
メジャーの選手と、それほど大きな能力の差があるのだろうか? そうは思いたくない。