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驚異の高卒新人、ハーパーとトラウト。
規格外の才能を伸ばすMLBの育成術。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/06/13 10:30
4月28日のドジャース戦でメジャーデビューを果たしているブライス・ハーパー。打撃好調もさることながら、毎試合“魅せる”プレーの連続で、全米にブームを巻き起こしつつある。
とてつもないルーキーが出てきたぞ──。
メジャーリーグの新人はスケールが違う。
毎年、毎年そのことを実感するのだが、今年ばかりはスケールが桁外れ。このまま成長していけば、いろいろな記録を打ち立てそうな選手がふたりいる。
ひとりはナショナルズのブライス・ハーパー。メジャー通の方ならご存知だろうが、高校時代に『スポーツ・イラストレイテッド』誌の表紙を飾ったことでも有名で、
「ジャッキー・ロビンソン以来の話題のルーキーだ」
「マイナーで彼の成績と比較可能なのは、アレックス・ロドリゲスだけ」
といった話題には事欠かない。
ハーパーは1992年10月生まれの19歳。日本でいうと、高校を出て2年目のプロ選手に該当する。6月5日時点での成績は、
打率 .288
出塁率 .375
長打率 .528
従って、出塁率と長打率を足したOPSは.903となる。これがどれほどの数字かというと、たとえばマリナーズのレギュラー陣でOPSが.800に達している選手は誰ひとりとしていない(6月5日時点)。
ハーパーにはちょっと目立ちたがり屋のところもあって、デビュー早々、フィリーズのハメルズからビーンボールを投げられたりしたが、今後も話題を提供してくれることは間違いない。
驚異的な打棒でチームの借金を完済した孝行ルーキー。
もうひとりのスーパールーキーは、エンジェルスのマイク・トラウト。1991年8月7日生まれのまだ20歳で、ハーパーの1年上にあたる。
トラウトはマイナースタートだったが、エンジェルスが貧打にあえぎ6勝14敗と大きく負け越しているところでお呼びがかかった。
昇格したトラウトは1番を任され、彼がプレーするようになってからエンジェルスは23勝14敗、借金を帳消しにして優勝戦線に戻って来たのだ。