プロ野球亭日乗BACK NUMBER
華々しい本塁打の影に貧打の苦しみ。
松井秀喜は“忍”の一字で機運を待つ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2012/06/10 08:01
レイズのマドン監督も「(松井秀喜の)状態はいい。ただ本当に運がないだけだね」とコメントし、松井の攻守にわたるプレーも褒めているのだが……。
内容が良くても結果が出ない。
それがバッティングを崩す大きな要因となることがある。
「どこまで我慢できるかですね」
タンパベイ・レイズの松井秀喜外野手がこうつぶやいたのは、6月6日(日本時間7日)、ニューヨーク・ヤンキース戦の試合後のことだった。
いったい何を我慢するのかというと、打てども打てども、なかなか安打につながらないという現実をだった。
約1カ月間のマイナー調整を終えて、5月29日にメジャー昇格を果たした松井は、昇格初戦となったシカゴ・ホワイトソックス戦で名刺代わりの一発を放って華々しいレイズデビューを飾った。
その2日後のボルティモア・オリオールズ戦。ア・リーグ東地区の首位攻防戦となったこの試合でも、元中日の左腕・チェンから特大2号。松井はたった3試合でその存在感をいかんなく発揮して、順調なメジャー復帰を飾ったように見えた。
本塁打を含めてヒットはわずか3本という惨憺たる現実。
だが、である。
そんな華々しい印象とは裏腹に、現実の数字はひどいことになっている。
ヤンキース戦を終えた7日(同8日)時点で、打率は1割台の前半と低迷している。メジャーで放ったヒットは、そこまで本塁打の2本と3日のオリオールズ戦で放った左前安打の合わせて3本だけというのが実際の結果だったのだ。
「内容は悪くないと思うんです」
松井は言う。
「ダーラム(最終調整していた3Aのダーラム・ブルズ)のときは、自分でも納得できない部分があったんですけど、上に上がったら良くなった。理由は自分でも分からないです。ただ、意識はしていないけど、(メジャーでプレーするという緊張感など)やっぱり精神的な部分があるかもしれないですね」
これは決して負け惜しみではない。