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ナショナルズの変身と若手の鮮度。
~MLBの弱体球団、快進撃の理由~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2012/05/03 08:01
右肘再建術で1年間のリハビリを強いられたが、自慢の剛速球はもちろん、巧みな変化球で打者を圧倒するストラスバーグ。
弱体球団ゆえに与えられた特典を活かした球団運営。
ご承知のとおり、ナショナルズの前身はモントリオール・エクスポズである。エクスポズは'05年から本拠地をワシントンに移し、チーム名も改めた。以後7年間、ナショナルズは一度も勝ち越したことがない。
が、弱体球団の特典で、ドラフトの上位指名権はずっと得つづけてきた。
'07年にはジョーダン・ジンマーマンとディトワイラーを獲得した。'09年にはストラスバーグを、'10年には17歳の新星ブライス・ハーパーを指名することができた。
さらに2009年からはGMが替わった。
新GMのマイク・リゾはスカウト網の充実を最優先させると同時に、積極的なトレードやFA選手の獲得にも乗り出している。その結果が、中軸打者ジェイソン・ワースや、左の主戦投手ジオ・ゴンザレスの獲得である。ゴンザレスの交換要員としてアスレティックスに移ったトム・ミローンやA・J・コールといった投手は、いずれも'08年から'10年にかけてドラフトされた有望投手だ。もったいないという声もあがったが、ゴンザレスがこれだけ活躍すれば、声は自然に封じられる。
そんなわけで、いまのナショナルズは相当に鮮度が高い。
問題は大リーグ全体で26位の低打率をかこつ打線だが、ここは大型新人ハーパーの成長と、現在、15日間の故障者リストに入っているライアン・ジンマーマンの復活に期待しよう。それともうひとり、アンソニー・レンドンという21歳の新人内野手も無視できない。
冬の時代が長かっただけに、こういう球団が強くなると、ついえこひいきをしたくなる。