MLB東奔西走BACK NUMBER
統一球はメジャー球より飛ばない!?
MLB側から考える本塁打減少の理由。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKyodo News
posted2012/05/13 08:01
統一球の導入前とその後で、ほとんど成績が変わっていないターメル・スレッジ。昨年は故障で出場試合数を減らしたが、本塁打も20本以上(打率は向上)という活躍をみせていた。
ここ数週間の間、松井秀喜選手のレイズ入団、超有望新人ブライス・ハーパー選手の若干19歳でのメジャー初昇格、さらには和田毅投手のトミー・ジョン手術(ヒジの腱移植手術)決断とMLBでは話題続きだった。
そんなMLBからの視点で、今回は敢えて日本でも再度話題になっている“統一球”に関する問題を取り上げてみたい。
4月24日、日本プロ野球選手会がNPBおよび12球団に対し、昨年から導入された統一球について検証と見直しを求めた。
これについてはすでに様々な報道、論証がなされているのだが、長年メジャーを取材している上で、その関連報道を読んでいくうちに違和感を感じた。
昨年、NPBでは本塁打が激減したという事実からも明らかなように、統一球が以前よりも“飛ばないボール”であることは紛れもない事実だ。
だが今回の事務折衝で話題になったのは、「統一球はメジャー球よりも飛ばないのではないか」ということ。
マリナーズ、アスレチックスと親善試合で対戦した阪神、巨人の選手たちの感想ということだが、あくまで日本側の言い分でしかない。
「メジャー球と統一球の違いはまったく感じなかった」
やはり公平を期すためにも、もう一方の当事者の意見も確認すべきだろう。
本来ならマリナーズ、アスレチックス双方の選手たちからアンケートを採った方がより正確な総意が判明するのだが、今回は、アスレチックスでパワーヒッターに位置づけられるセス・スミス、ジョニー・ゴームス両選手に統一球について尋ねてみた。
「日本がボールを変更しているのは知らなかった。もちろんボールによってかなり差が出てくるのは間違いない。メジャーでも練習用のボールより試合球の方が難しくなっているからね。だがメジャー球と統一球の違いはまったく感じなかった。むしろ東京ドームで打つのは凄く楽しかったよ」(セス・スミス)
「日本が統一球で本塁打が減ったことは知っていた。今回、統一球に触れてみて、皮の質がメジャー球よりも粘り気があって、かなり投手に有利ではないかと思った。だが打つ方に関しては大きな違いは感じなかった。どんなボールでも芯を捕らえていいスイングをすれば飛んでいくよ」(ジョニー・ゴームス)
如何だろうか。メジャー選手たちはこのような反応をしている。
もちろん日本の選手にしろ、メジャーの選手にしろ、彼らの意見はあくまで感覚的なものでしかない。
統一球導入にあたり事前に様々な検査をした結果として“メジャー球より多少は弾む”というデータもあったわけなのだから、選手会サイドは統一球に少し過敏になりすぎているのではないだろうか。