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ナショナルズの変身と若手の鮮度。
~MLBの弱体球団、快進撃の理由~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph bySports Illustrated/Getty Images

posted2012/05/03 08:01

ナショナルズの変身と若手の鮮度。~MLBの弱体球団、快進撃の理由~<Number Web> photograph by Sports Illustrated/Getty Images

右肘再建術で1年間のリハビリを強いられたが、自慢の剛速球はもちろん、巧みな変化球で打者を圧倒するストラスバーグ。

 4月が過ぎた。大リーグも開幕から約1カ月が経った。

 1カ月で1年を占うのは乱暴だが、開幕前の予想は方々で裏切られている。少なくとも私の予想はかなり修正を余儀なくされている。

 第一に、優勝候補と予想したチームの調子が上がらない。ア・リーグではエンジェルス、ナ・リーグではマーリンズが、それぞれ各地区の最下位に沈んでいる。

 活躍を予想した選手のなかでは、ティム・リンスカムの調子が悪い。最近は少し戻り加減だが、4月中旬までは投げるたびに大乱調で、防御率も8点台という惨状だった。打者でも、超大物のアルバート・プホルスや復活を期待されたハンリー・ラミレスがさっぱり打てない。2割そこそこの低打率には思わず眼を疑ってしまう。

 一方で、驚くような開幕ダッシュに成功した選手やチームも少なくない。なかでも新鮮なのは、マット・ケンプとワシントン・ナショナルズの快進撃だろう。

 ケンプは4割2分5厘、11本塁打、24打点(4月30日現在)、リーグ三冠を走っている。2011年のMVP争いではライアン・ブラウンにあとひと息及ばなかったが、今季はかなり有力といっても過言ではない。

チーム作りの基礎段階にあるナショナルズが、早すぎる快進撃!

 もっと凄いのはナショナルズの躍進だ。

 チーム作りの基礎工事が完了して強くなったとは感じていたが、こんなに早く成果が出るとは思わなかった。大リーグ屈指の激戦区であるナ・リーグ東地区で、ブレーヴスと並んで首位(4月30日現在)という成績も立派だが、もっと素晴らしいのは、チーム防御率が大リーグ全体で1位を占めていることだ。 

 ナショナルズは先発投手陣を5人で回している。

 スティーヴン・ストラスバーグ、ジョーダン・ジンマーマン、ロス・ディトワイラー、ジオ・ゴンザレス、エドウィン・ジャクソン。このうち、ジャクソンを除く4人までが、4月に防御率1点台を記録した。

 打線の掩護が弱いので勝ち星にはあまり恵まれていない(2勝0敗)が、ストラスバーグなどは4月に32イニングスを投げて、34奪三振、防御率=1.13という圧倒的な数字を残した。2010年最大のルーキー、いや、ここ数年間で最も注目を集めていた新星が、故障癒えてようやく真骨頂を発揮しはじめたというところだろうか。

 もうひとつの特徴は、彼ら5人がそろって若いことだ。

 レイズやタイガースで実績を残してきたジャクソンだけは28歳(今年9月で29歳)だが、残る4人はそろって26歳以下である(ストラスバーグは23歳)。しかも彼らは、2015年終了時までFAの資格を得られない。いいかえれば、ナショナルズの投手王国時代は、まだ幕を開けたばかりなのである。比較的近い例では、ティム・ハドソン、バリー・ジート、マーク・マルダーの黄金トリオをそろえた2000年代初頭のアスレティックスが近いだろうか。

 いうまでもないが、この隆盛には伏線がある。

【次ページ】 弱体球団ゆえに与えられた特典を活かした球団運営。

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