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「サッカー王国に勝てた!」
なでしこは金メダルに近づいたのか? 

text by

河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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photograph byAsami Enomoto

posted2012/04/06 11:30

「サッカー王国に勝てた!」なでしこは金メダルに近づいたのか?<Number Web> photograph by Asami Enomoto

ブラジル戦では3得点に絡む活躍を見せた主将の宮間あや。試合後は、自然に宮間を中心として歓喜の輪ができた。

主力選手が「どこにパスを出せばいいの!」とアピール。

 高い位置から積極的にプレスをかけはするのだが、それぞれが連動していないから簡単にかわされ、パスコースを作られる。敵のセットプレー時にゾーンで守るのはいいとして、いかんせんマークの受け渡しが悪く、アメリカ戦でも日本戦でも走り込んできた相手を捕まえきれずに失点している。

 堅固とは言い難い守備。そしてバルセロス監督が試合後、

「海外でプレーする選手が多いので、代表として集まって練習する時間をなかなか持てない」

 とこぼしたように、ブラジルらしい攻撃のコンビネーションもまだできあがっていない。マルタと並ぶチームの二枚看板の一人、クリスチアーニがドリブルしながら

〈どこにパスを出せばいいの!〉

 と味方選手に身振りでアピールしていたのは、それを端的に表す光景だった。

 加えて、前々日にアメリカと試合を行っているというハードな試合日程。

 こんな状態のブラジルに勝ったからといって、諸手を挙げて喜べるのだろうか。

「サッカー王国に勝てた」という自信こそが最も大きな収穫。

 それでもやはり、大きな価値がある。自他ともに認める世界的な技巧派チームをなでしこがパス回しで凌駕し、勝ったという事実。

 これは「日本の攻撃を止めるので精いっぱいだった」と述懐したバルセロス監督を始め、ブラジル選手たちにとって心理的ダメージとなって残るはずだ。

 逆に日本選手、特にブラジルとの対戦経験がなかった者にとっては大きな自信となる。川澄奈穂美の「サッカー王国に勝てた」という言葉は、偽らざる実感だろう。

 前への推進力や自在なポジションチェンジなど、今年に入って取り組んできた課題をアメリカ、ブラジルという世界的強豪を相手に表現できた2連戦。今大会で得られた収穫は大きい。

 ただ、大会前から佐々木監督も公言していたことだが、勝ちにこだわり過ぎたのではないかという懸念はある。

【次ページ】 勝利優先の2戦だったが、チーム作りが遅れたのでは?

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