なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「サッカー王国に勝てた!」
なでしこは金メダルに近づいたのか?
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAsami Enomoto
posted2012/04/06 11:30
ブラジル戦では3得点に絡む活躍を見せた主将の宮間あや。試合後は、自然に宮間を中心として歓喜の輪ができた。
ブラジル女子代表監督のジョルジェ・バルセロスは、かつてWPS(アメリカ女子プロサッカーリーグ)のセントルイス・アスレティカを率いていた。チームは'10年5月末、経営破綻によって消滅したが、その'10年シーズンにアスレティカの主力選手の一人だったのが、現・なでしこジャパン主将の宮間あやである。
4月5日、キリンチャレンジカップ最終日。日本がブラジルに4-1で勝利を収めた後、バルセロスにアスレティカ所属時代の宮間の印象を尋ねてみた。
「ドリブルがうまくて、ボールを前に運んでくれる選手だったけど、敵選手のマークができなかった。だからよく彼女には『お前が守備にも力を入れたら、間違いなく世界レベルの選手になる』と言ってたんだ。今回、久しぶりに彼女を見たら攻撃だけでなく、守備もしっかりやっている。彼女の成長は、私にとってもうれしい限りだよ」
この発言にどうにも合点がいかなかったことを、白状しなければならない。
宮間は'08年になでしこが佐々木監督体制になってから、ゾーンディフェンスを遂行する上での欠かせないピースのひとつだった。守備のコンセプトと具体的な任務を明示すれば、それを忠実にこなす選手なのだ。その彼女が、守備をしなかった……?
個の能力頼みのブラジルに、組織的守備戦術はほぼ無かった!?
ぼくは、バルセロスの率いる二つのチームを見たことがある。それは'08年北京五輪での女子ブラジル代表と、'09年シーズンのアスレティカだ。
どちらも攻守両面において、個の能力頼みのチームだった。もちろん、ディフェンスにおける組織戦術などないに等しかった。彼にとっての守りとは、1対1の状況で相手をつぶすということなのだ。孤立無援の状態の宮間が相手を止め切れなかったシーンを何度か目の当たりにして、指揮官は彼女のマークが甘いと断じたのだろう。守備センスを持ち合わせていないのは、実はバルセロスの方なのだが。
果たして今回来日したブラジルも、いかにもバルセロスのチームだった。