自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
自転車からスカイツリーを仰げば、
銀座、浅草、そして業平橋。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/04/16 06:00
おおおおおお! ついに見つけたスカイツリー。
お約束の雷門。人力車の兄さんがたくさん出てる。ハーモニカとガットギターの「流しのオッちゃん」(うわ、まだいたのか)までいる。
おお、栄えある「台東区浅草1-1-1」の住所、日本最初のバー「神谷バー」の前を通り過ぎていく。でも、この神谷バー、名前はバーだけど、バーじゃないぞ。じゃあ何か。私は個人的に「東の神谷バー、西の食いだおれ」と思ってた。そのココロは……、行ってみれば分かります。
さて、目の前にそびえるのは、例のアサヒビール本社、ビールジョッキビルだ。横にフラムドール(flamme d'or、フランス語で“金の炎”)の巨大オブジェ(ウン○なんて言ってはいけませんよ)もある。
そして! その横に! おおおおおお! 見つけた! デカい! あれこそが! スカイツリーだぁぁぁぁ。
恥ずかしながら、本物を初めて見た。そうか、浅草から見えるんだ。そうだよね、気をつけていれば、もっと前から見えていたはずなんだ。だって、スカイツリーが立つ業平橋という場所は、浅草の隣町なんだから。
うわあ、そうか。あれがスカイツリーなのか。
そのお姿を正面にロックオン。あとは自転車のことだもの、スカイツリーをめがけて、ひたすら道を行くだけだ。
東京タワーは第二次産業的。スカイツリーは……。
吾妻橋を越える。塔はどんどん近づいてくる。細い路地を行く。塔はもっと近づいてくる。周囲は低いビルばかりだから、スカイツリーは必然的に目立つ。目立つというより、このデカさ、何だかこの世のものと思えない。
よくテレビの時代劇ドラマの背景などで「遠くに霞むお城」みたいな感じの絵とかCGが使われていることがあるでしょう。あれみたいな感じなのだ。
まだ工事中だからなのかもしれないが、スカイツリー、あたかも現実にぽろりとこぼれ落ちたCGのごとしである。
しかしね、東京タワーと比較しても、この現実感の希薄さは際立ってるよ。
紅白に塗られ、あたかも「工事現場のクレーンの親玉」のような東京タワーは、ある意味、現実感がありすぎる佇まいだと思う。なんというのか、第二次産業的というか、経済成長的というかね。いかにも、あの頃の日本だよな、という感じ。
ところが、スカイツリーには、似てるモノがない。強いていえば、上海とかドバイとかにあるワケのワカラン国威発揚タワー。
だけど、このスカイツリーには、あまり国威発揚的な意味がないんで、ただひたすら巨大なB級芸術としてそこにあるかのようだ。平成という時代はそう記憶されるのだろうか。