自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
自転車からスカイツリーを仰げば、
銀座、浅草、そして業平橋。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/04/16 06:00
銀座はエライ! 自転車は歩道を走らないのだ。
休日朝は、やはり銀座といえども、あまり人がいない。クルマ通りもそんなにでもない。がらんとした中央通り。
こうなると昨今の銀座という街は、横文字の看板ばかりが目立つな。世界中の「ブランド」ってヤツがここまで集結している街は、恐らく他にない。一人で手を伸ばして写真をぱちりだ。あたかも女子高生の写メールのごとくである。
自転車がらみの何かはないかな、と、見渡すと、お、歩道に「自転車は通っちゃ駄目よ」の看板が立っている。
なるほどさすがは銀座。エラい。その通りだ。自転車は軽車両という名のれっきとした車両なんだから、もとより歩道を走ってはイカンのだ。
だって、歩行者に危険でしょうが。
歩道というものは、通常の歩行者以外にも、老人、子供、白い杖、車椅子の安全が確保されるべきサンクチュアリでなくてはならない。軽車両たるもの、車道に出なさい。
もちろん私も車道を走っている。メッセンジャーなどもみな車道だ。さすがは銀座、モノが分かってる。健全な街である。でも、平日夜などはその車道の路肩に違法駐車やら客待ちタクシーやらがずらりと停まっていて、気を抜いてると、突然ドアを開けられたりして、トンデモない目に遭うんだけどね。
さて、その銀座、中央通りを「銀座八丁目」から「銀座一丁目」へと一気に突っ切っていく。あっという間に銀座を行きすぎて、次に出てくる道路表示が、京橋(東京駅の八重洲口前方だ)、永代通り、そして交差点を越えると、目の前がもう日本橋だ。
足下を神田川の支流が流れ、頭上を首都高速6号向島線が走る、なんというのか「薄暗い橋」である。
うーむ、すまん、ビジュアルで言うと、やはりあまり明るくはないんだよね、日本橋という橋は。
麒麟の背中に羽根が生えてる!? 日本橋に込めた明治の気概。
本来はそうじゃなかった。
お江戸日本橋は東海道、中山道をはじめとする五街道の起点であって(今でも「日本国道路元票」なんてのがこの橋にあったりする)、数多の商売人たちで溢れる日本屈指の繁華街だった。安藤広重の浮世絵などでも有名だよね、あの明るい日本橋。
あれが現在の石造りの橋になったのが明治44年。木造時代から数えて、これが19代目なのだという。
石造りのモダンな橋として、絵ハガキなどになった明治大正の頃が、もしかして日本橋が最も美しかった時代かもしれない。
でも、東京オリンピックの直前、頭上に首都高速の高架が造られ、現在の薄暗い日本橋となった。そういう意味で、ここは「高度成長のモニュメント」でもあるのだ。
橋の欄干には何だか「明治モダン」な龍の彫刻が据えてある。龍? いやいや、実は麒麟なのだそうだ。おお、そう思ってみれば、手足もあるし、尻尾も長くない。顔だけが龍に似てる。
そして、おや、なぜか背中に羽根が生えている。
ビール瓶を見てもらえれば分かるが、通常、麒麟にこのような形の羽根はない。ところが、この日本橋の麒麟には、明治日本という新興国が「道路の起点・日本橋から飛び立つのだ」という意味が込められ、羽根が付加されたのだそうだ。
その麒麟の足下でまたぱちり。
今回使ったフォールディングバイク「BD-1」という自転車は、まことにすぐれた自転車でありましてね。フォールディング、すなわち折りたたみ自転車なのにもかかわらず、異常なスピードが出る。ソリッドな乗り心地、ダイレクトな走行感、小径にもかかわらずグッと力が込められるギアレンジの広さ、にわかロードバイク乗りなどは普通にパスできてしまう。あたかも羽根が生えたごとく(リアルな形容)だ。
そのくせ「折りたたみ自転車」だから、何かあったら(たとえば雨が降ったりしたら)、すぐに折りたたんで電車に乗り込むことができる。
少々高いには高いけど、さすがはドイツ製。ふーむ、なんというのか最強の街乗り自転車だよ。