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<独占インタビュー> 石田正子 「競技のために、賭けなかった」 ~クロカン5位入賞、快挙の裏側~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2010/04/12 10:30
それは、競技に注目して欲しいという思いからきたもの。その胸の内を語ってくれた。
2月27日。バンクーバー五輪のスキー会場のウィスラーで、ひとつの快挙が生まれた。
石田正子、クロスカントリー30kmクラシカル、5位入賞。日本の五輪、クロスカントリー史上最高の成績である。
長い歴史を誇るクロスカントリーは、海外では数あるスキー種目の中でも注目度が高く人気のある競技だ。第1回の冬季五輪から採用されたのは、ジャンプ、ノルディック複合とクロスカントリーであることも、その重みを物語る。
だが日本でのクロスカントリーの地位は、海外とは異なる。注目度も大きく差があり、結果、競技を取り巻く環境も厳しい。日本代表チームのスタッフの数は限られている。そもそも、競技を続けていける環境を整えるのに必死な選手も少なくはないのが現状だ。そうした競技環境の違いもあって、日本のクロスカントリーは、厚い壁に跳ね返されてきた。
クロスカントリーの注目度を上げるために挑んだ五輪。
トリノ五輪に続き、2度目のオリンピックとなったバンクーバーを前に、石田は常に言い続けてきた。
「もっとクロスカントリーに注目してほしい。そのためにもメダルを獲りたい」
初めてインタビューしたとき、言葉にこめた気持ちをこう説明していた。
「マラソンだったらみんな知っていて、観ますよね。だったら、クロスカントリーももっと観てもいいんじゃないかなと思います。それに、メジャーなスポーツだってマイナーなスポーツだって、みんな頑張っているんです。もっと平等に見てほしいという思いがあります。少しずつ認知度は上がっているかもしれない。けれど、もっと大々的に広まってほしいんです」
クロスカントリーを始めた小学1年のときから、20年以上続けてきた。人生の3分の2以上、打ち込んできたからこその切実な思いとともに、バンクーバーへと挑んだのだ。